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44. ページ44

成宮

.

しーんと沈黙が部屋を流れる。


『まだ、あのときみたいに、俺のこと嫌い?』


俺のその言葉から、黙り込んでしまった。


「好き!」って即答してくれるのが、一番嬉しいんだけど、いつもなら、面と向かって「嫌い」と言い放ってくるAちゃんが、

少しでも悩んで、

揺れて、

真剣に考えてくれるなら。



.



「…離して」


沈黙を裂くように小さく呟くAちゃんに、俺は手首から手を離してじっと彼女を見つめる。


「成宮のことは……………嫌いじゃない」


うつむいたまま小さく呟くAちゃんに、
俺の胸の奥の方がどくんと大きく跳ねる。


「でも、好きか付き合いたいかと聞かれたら、違う」


あ、これ、怖い方に行ってる。

今までなんどもAちゃんに拒否されてきたけど、それはいくらかおれのほうも冗談が混じっていたから、そこまで深く受け止めてなかった。

Aちゃんも同じだと思うけど。


真剣に向き合うってことは、


俺たちの距離を縮めるには大事で、

絶対に必要なことだけど、


同時に怖いことだ。


「成宮は私のこと知ってるのかもしれないけど、私はまだそういう風に考えられるほど成宮のこと知らない」

「……うん」


なんとか出た相槌。

つーんと鼻の奥の方が痛くなって、
でもフラれて泣くとか馬鹿みたいなことしたくなくて、俺はAちゃんを見つめていた目を布団の上におとす。


「だから、ちゃんと知りたいと思ってる」


「え?」


ぱっと顔をあげれば、


Aちゃんは、


眉間にしわを寄せて、
床の上を見つめて、


顔を真っ赤にしていた。


「ちゃんと成宮のことを知りもしないのに、ありえないって突き放すのは、違うと思うから……」

「…………それは…お友達からってこと?」

「…………まぁ」


うつむいたまま、こくりと頷くAちゃん。

俺の心臓が動き回って、引っ込みかけた涙も若干でかけて、

それを隠すように、床の上におとなしく正座している彼女を、布団から飛び出して抱きしめた。


「ちょ!なにす…!」
「あーっ超嬉しい………」


じたばたと暴れるAちゃんを無理やりぎゅうっと胸の中におさめて、彼女の肩口で情けなく落ちかけた涙をぎゅぎゅっと拭う。


「………絶対、すぐ好きになるよ、俺のこと」

「………その自信はどこからくるの……」

「覚悟しといて」


呆れるAちゃんの顔をじっと見つめて隙をついて頬に唇を寄せれば、呆れたように叩かれた。

.

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設定タグ:ダイヤのA , 成宮鳴   
作品ジャンル:ラブコメ
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作者名:ちか | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2014年2月14日 18時

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