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成宮
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しーんと沈黙が部屋を流れる。
『まだ、あのときみたいに、俺のこと嫌い?』
俺のその言葉から、黙り込んでしまった。
「好き!」って即答してくれるのが、一番嬉しいんだけど、いつもなら、面と向かって「嫌い」と言い放ってくるAちゃんが、
少しでも悩んで、
揺れて、
真剣に考えてくれるなら。
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「…離して」
沈黙を裂くように小さく呟くAちゃんに、俺は手首から手を離してじっと彼女を見つめる。
「成宮のことは……………嫌いじゃない」
うつむいたまま小さく呟くAちゃんに、
俺の胸の奥の方がどくんと大きく跳ねる。
「でも、好きか付き合いたいかと聞かれたら、違う」
あ、これ、怖い方に行ってる。
今までなんどもAちゃんに拒否されてきたけど、それはいくらかおれのほうも冗談が混じっていたから、そこまで深く受け止めてなかった。
Aちゃんも同じだと思うけど。
真剣に向き合うってことは、
俺たちの距離を縮めるには大事で、
絶対に必要なことだけど、
同時に怖いことだ。
「成宮は私のこと知ってるのかもしれないけど、私はまだそういう風に考えられるほど成宮のこと知らない」
「……うん」
なんとか出た相槌。
つーんと鼻の奥の方が痛くなって、
でもフラれて泣くとか馬鹿みたいなことしたくなくて、俺はAちゃんを見つめていた目を布団の上におとす。
「だから、ちゃんと知りたいと思ってる」
「え?」
ぱっと顔をあげれば、
Aちゃんは、
眉間にしわを寄せて、
床の上を見つめて、
顔を真っ赤にしていた。
「ちゃんと成宮のことを知りもしないのに、ありえないって突き放すのは、違うと思うから……」
「…………それは…お友達からってこと?」
「…………まぁ」
うつむいたまま、こくりと頷くAちゃん。
俺の心臓が動き回って、引っ込みかけた涙も若干でかけて、
それを隠すように、床の上におとなしく正座している彼女を、布団から飛び出して抱きしめた。
「ちょ!なにす…!」
「あーっ超嬉しい………」
じたばたと暴れるAちゃんを無理やりぎゅうっと胸の中におさめて、彼女の肩口で情けなく落ちかけた涙をぎゅぎゅっと拭う。
「………絶対、すぐ好きになるよ、俺のこと」
「………その自信はどこからくるの……」
「覚悟しといて」
呆れるAちゃんの顔をじっと見つめて隙をついて頬に唇を寄せれば、呆れたように叩かれた。
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