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鳴さんと鳴さんの家庭教師中の彼女のところに、雅さんに言われて声をかけに行くと、そこに広がっていたのは、
彼女に抱きついて、スカートに添えられている鳴さんの手と、必死にそれを抑える彼女さんの図。
しばらく沈黙で見ていたけど、
見ちゃいけないものを見た気持ちになって焦り全開で伝えるべきことをまくし立てた。
慌てる様子もなく、たんたんとしながら出て行った彼女さんを、なぜか俺が追いかけて、送って行くことになり、
初対面の女の先輩と夜道を二人きりであるいている。
「……あの、なんかすみません」
「え?」
「……邪魔したみたいで……」
あのあと鳴さんにブーブーと言われたことは言わずもがな。「空気読めよ」と責められた。
でも、当の彼女さんはさして焦る様子も怒る様子もなく、「いや、逆に助かった」とつぶやくように言う。
「……………先輩は、鳴さんと付き合ってるわけじゃないんですか?」
「……………」
俺の言葉に、ものすごく嫌そうなかおをして睨みつけてくる先輩に「すみません」とあやまりながら、怒られた理由をさがす。
「……成宮と付き合ってなんかない」
「そ、そうなんですか?」
「…だから…うん、助かった」
「でも鳴さんはあなたのこと好きなんですよね」
「…」
ため息をつく先輩にあははと笑う俺。
「笑い事じゃないんですけど」と睨んでくる先輩にすみませんとあやまりながら、鳴さんが一方的に好きだと言ってる状況を思い浮かべるとあまりに面白くてまた笑ってしまった。
「………」
「す、すいません………でも、気持ちはわかります」
「まあ、野球部も成宮の扱いに苦労してるみたいだし、お互い様だよね…」
「そうですね…」
二人して遠い目をして、苦笑いをすると、先輩が俺の方を向いて尋ねる。
「名前、なんていうの」
「あ、多田野樹です」
「多田野くん…あのさ、もしよかったらなんだけど………」
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