男性を魅了してしまう血鬼術にかかってしまったわけですが

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「悪いって思うならあの時のことは忘れろォ」

「俺はド派手に忘れられねェな」


正気に戻ってすぐは、関わった人間の記憶を抹消しようと躍起になっていた不死川のその言葉に、宇髄は茶々を入れる。不死川は拳を握り締めたが、私闘は禁止であるためどうすることもできないまま体を震わせた。


「何かあったっけ？」

「俺は直接被害はなかったが、柱としての自覚を持て。戦場でもその様だと先が危ぶまれるぞ」


時透はいつもの虚ろな目で忘却された記憶に首を傾げ、伊黒はネチネチと心配とも取れる言葉を口にした。


「私だってたくさん失敗しちゃうもの！大丈夫よ！」

「お気になさらないでください」


甘露寺は煉獄とは反対側の肩に手を置きそう励まし、胡蝶は優しい笑顔を浮かべた。


Aは仲間の優しさに心打たれ、目の前が霞む。必死に鼻をすすって涙を耐え、もう一度、今度は感謝の言葉と共に頭を下げた。


「…ほら、冨岡さんも。Aさんに何か言ってあげないんですか？」

「…」

「無視ですか？そんなんだから」


一歩離れたところで、何も言わずに立ち尽くす冨岡に、胡蝶は何時もの言葉を告げようとした。その時、冨岡はおもむろにAに近づき、両側に煉獄と甘露寺が居る中で、その真正面に堂々と立つ。


「…皆、Aのことは好いてはいないんだな？」


突然投げられた問いに一早く煉獄が反応し、「恋愛感情を指すならば、答えは否だな！」と言い放つ。それに続き、今回血鬼術に当てられた柱達も同じように否定する。


それを聞いて、冨岡はならば良いとばかりに頷き、Aにまるで決定事項のように語りかけた。


「ならば、俺は心置きなくAと恋人になれるいうことだな。大切にする」


Aは一瞬何を言われているのか分からなかった。だが、理解するにつれて、その顔を徐々に赤に染めていく。


その様子を甘露寺はまるで林檎の色づきを早送りで見ているようだと、どこか意識を飛ばして見ていた。


「え、えええ、えええ？？？？し、しのぶちゃん！？冨岡さん血鬼術解けてないよ？？？」

「そんなことないですよ」

「違うのか？Aも俺のことを好いていると言っていた。そして俺は今、俺の選択でこう言ったんだが」


Aはそれでも受け入れられず頭を抱える。だって、そんなことあり得るわけないのだから。

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