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雲間には、ようやく少しだけ、青い空がのぞき始めていた。
教務課のある建物から、本館に向けて、花の終わった桜並木の下を歩いていく。
白い漆喰塗りの建物も、石畳の道も、さっきまでの雨にまだしっとりと濡れている。
ふた月前の入学式のころと決定的に違うのは、雨上がりがこんなに暖かくなったことだ。
湿ったそよ風が吹きすぎていく。
ぶ厚い雲の下で、ようやく新芽をふき始めたけやきの木肌が、まるで裸の人間のようになまめいて見えた。
この大学のキャンパスはけっこう広い。
理工学部と人文学部、経済学部などのほとんどの学部がこのキャンパスを使っている。
別のキャンパスなのは、看護学部と医学部だけだ。
普段講義が行われる建物だけでも、全部合わせて15号館もあるし、その他に生協とか、学食とか、部活やサークルの部室なんかがあちこちに建てられている。
その全てが今は、濡れそぼった緑の濃淡に包まれて、しん、と静まり返っていた。
授業時間中のせいか、あたりに人影はほとんどない。
傘をたたんだ男の子が2人、理工学部の講義棟の入口へと続く石段で立ち話をしているのと、掃除のおじさんが、濡れて石畳に張り付いた葉っぱを苦労しながらはき集めているだけだ。
ツタの若葉がからまった時計台を見上げると、11時だった。
昼食にはまだ早い気もするが、この時間ならかえってゆっくり食べられるだろう。
学食はまだ、空いているだろうから。
トートバッグを左肩にかつぎ直して歩き出したとき、
「A！」
よく通る声に呼び止められた。
普段、大学で呼び止められることなんて滅多にないので驚いて目で探すと、立ち話をしていた男の子のうちの1人が、こちらに2、3歩近づいて手を振っているのが見えた。
うらたさんだ。
彼は話していた友人であろう人物に2言3言声をかけて、こちらに駆け寄ってきた。
「どこ行くの？」
「学食ですよ」
学食は、理工学部の講義棟が並ぶ中にあった。
学食に行くには、必然的に理工学部棟のほうに行く必要がある。
なるほど、たしかに、うらたさんは理工学部の所属だった。
「ってかお前、授業はいいの？」
「今日午後イチからです」
「そ。学食、俺も一緒に行っていい？」
「………どうぞ」
どうして私に聞くんだと思いながら答えると、うらたさんはぱっと電気がついたみたいに笑った。
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りひと(プロフ) - たまさん» たま様/コメントありがとうございます！またコメントをいただけて嬉しいです！続編のほうも、引き続きよろしくお願いいたします！ (2019年12月24日 11時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
たま(プロフ) - こんにちは！グッドイブニング･トウキョウから引き続きずっと読んでいます。坂田さんsideも入れて頂きありがとうございました。これからの逆襲編も楽しみですし、また坂田さんとくっつくのも楽しみにしております。これからも応援しております。 (2019年12月24日 11時) (レス) id: a928baf79e (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - shioriさん» shiori様/コメントありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです！今後も楽しんで読んでいただけるよう努めて参りますので、応援のほどよろしくお願いいたします！ (2019年12月22日 3時) (レス) id: 643f7a330d (このIDを非表示/違反報告)
shiori(プロフ) - 初コメ失礼します！浦田さんのキャラめちゃくちゃいいですね！元々惚れてますけど余計に惚れますね！応援してます！更新頑張ってください！ (2019年12月22日 1時) (レス) id: f06d85eb8e (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ゆずの実さん» ゆずの実様/コメントありがとうございます！どんどん更新して参りますので、今後とも応援のほどよろしくお願いいたします！ (2019年12月21日 13時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2019年12月13日 23時
