グットイブニング・トウキョウ【あほの坂田】 (ページ5)

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彼と話すのは、初めてだった。

坂田くんは、そんなことお構い無しに、よっこいしょ、と停留所にあるベンチに腰かけていた私の隣に座った。

太陽の日に照らされて、彼の赤い髪がキラキラと光っている。

あと1時間もすれば、あたりは彼の頭の色と同じになっていくのだろう。

「佐藤さん、同じ中学やったよね？」

「…うん」

俺、話したことなかったけどちゃんと覚えとるよ！とにこやかに言う。

なるほど、同じ中学の学区だから帰る方向も一緒なのか、と私は納得した。

「そ、そうなんだ。覚えていてくれて、ありがとう」

「これからは同じクラスやし、仲良くしよ！」

「うん。そうだね」

といいながらも、学校ではそんなに話さないだろうな、と心の中で思う。

普段仲のいいグループから離れると、自分だけ置いてけぼりになってしまうこともあるのだ。

特に彼は「上」のグループだし、そんな彼と仲良くしていたら、早坂さん達に裏で何を言われるかわかったものでは無い、と私は思った。

「Aさんは、いつもこのバスなん？」

「うん、バス通学」

「え!そうなん？俺もこのバス使ってるけど、会うのは初めてやんなぁ！」

確かにこの１ヶ月、彼とあった試しがない。

同じバスを使うなら、あっていても不思議ではないのに…

「ね、明日から一緒行こ!!俺、このバス乗ってて知ってる子おらんから、話し相手探しとってん!」

ね!!と彼は満面の笑みを浮かべた。

なるほど、これはモテるわけだ。と妙に納得する。

「うん。わ、私でよければ……」

「ほんま？めっちゃうれしい!!」

ちょうどそのとき、バスが来て会話が途切れた。

私の心臓は緊張でばくばくだ。吐きそうになるほどそいつはうるさくて、どうしようもない。

坂田くんはそんなこと知る由もなく、きたきた、とバスに目を向けていた。