Japanese hydrangea ページ25
酔ってしまった、と気づいたのは、お開きになる少し前だった。
何を何杯呑んだかなんて覚えていないほどのなペースで進めていたから、立ち上がったときにはもうフラフラだった。途中、センラに止められた気がするが、そんなのお構いなしに飲んだのは失敗だったと思う。
こんな風になるまで呑んだのなんて本当に久しぶりで、学生以来なんじゃないかと思う。途中からは、ほとんどヤケクソのような気持ちになっていた。
皆、身勝手だ。誰かのためを思っての言葉も、その誰かがそれを求めていなければ、相手を傷つけるだけ。私と渉さんはお互いに求めあっているけれど、求めるものが違う。
だからこんなにも、虚しいのだ。
そんなことを考えながら、センラといつものように別れようとすると、腕を引っ張られた。
「…………送ってく」
「大丈夫。ひとりで帰れる」
「大丈夫なわけあるか。ふらっふらやんけ」
「彼女に勘違いされるよ」
「そんなん、どうってことない」
センラは私のペースに合わせて歩いてくれた。秋も深まってきたからか、お酒のせいなのか、店の外は思った以上に寒い。おぼつかない足取りの私を支えながら、
「気持ち悪くはない？」
と言って、背の高いセンラは私の顔をのぞきこむ。渉さんとはそんなに身長が離れていないから、そうされるのはなんだか新鮮な気がした。
「大丈夫。ごめん」
気持ち悪くはなかったから、そう返せばセンラはまた少しだけ悲しそうな顔をした。
「どうしたん。そんな顔して」
「そんな顔って？」
「泣きそうな顔しとる」
「そんなことない」
「いーや、ある」
センラが何かをするたび、渉さんのことを思い出す。それがひどく虚しくて、浅ましくて、寂しい。
「寂しいん？」
ずばり言い当てられて、私は思わず「え……」と音を漏らしてしまった。
どうして彼には、全てわかってしまうのだろう。
センラはまた悲しい顔をして、ぽん、と私の頭に手を乗せる。
「予定変更。俺の家な」
それだけ言うと、家に着くまで彼はもう口を開かなかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 488人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あ(プロフ) - 初コメ失礼します。りひとさんの作品がとても大好きで過去作品も全て読ませて頂いております。続編もぜひ読みたいのですが、パスワードをお教えしてもらうことは出来ますでしょうか...？何分仕様が分からず、この場で聞くこと自体間違っていたら申し訳ありません。 (2021年2月10日 1時) (
レス) id: e8d9509923 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - あすかさん» 返信遅れてすみません。コメントありがとうございます。更新頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年12月14日 21時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
あすか(プロフ) - 初コメ失礼します！めちゃめちゃ面白くて見る度に評価押しちゃいます(笑)今1番を楽しみにしている作品です！更新頑張ってください(T_T) (2020年11月5日 21時) (レス) id: a6330c149b (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - いずりすさん» ありがとうございます。いつもと違うテイストに挑戦するので私自身もどきどきしています笑お楽しみいただけるよう頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。いずりすさんも体調には気をつけてくださいね。 (2020年10月14日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - Quuさん» ありがとうございます。お楽しみいただけるよう頑張ります。Quuさんもお体に気をつけてくださいね。今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年10月14日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
