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「A」
黙り込んだ私を気遣うようなセンラの声に、顔を上げた。
「なによ」
「あのさ、」
「分かってるわよ。浦田さんには奥さんがいるって。分かってるから。この話はおわり」
そう言って私は無理やり話を切り上げて、小さく笑った。
胸を張れない恋愛ではなく、笑って人に話せる恋愛をしろと、彼の表情は語っている。
そんな顔をするなら、どうすれば渉さん以外の男に気持ちを向けられるのか、教えて欲しかった。
「A。とにかく、うらたんはあかんって。Aにはきっとこれから」
「これから、何？私ひとりを愛してくれる人が現れるっていうの？おとぎ話じゃあるまいし」
渉さんとの関係を心から心配してくれているのは分かったが、だからといってそんな言い方はあんまりじゃないか。
全部ぜんぶ、ぶちまけてしまいたかった。私たちがどうやっていまの関係になったのか。彼がどんなことに苦しんでいて、そこにつけ込むように私が想いを伝えたことも。私自身がこの関係を望んだことも。そして、いまどうしようもなく寂しいことも。
私は荒々しい口調でセンラに答えながら目の奥が熱くなるのを感じ、慌てて唇を結んだ。
俯いた視線の先には、膝に置かれた手。色が変わるほど強く握りしめて震えている。こんなになるくらいに感情が溢れて動揺している。
「A？」
そんなことを考えながら自分の両手を見つめたままでいると、センラが私の顔を覗き込んだ。
「悩んでるなら、なんでも相談乗るし、Aが望むことなら何でもするから。自分を大事にせなあかんよ」
「………何でもなんて、嘘ばっかり」
「嘘やないって。俺がAにしてやれることなら、ほんまに何でもする。何でもするから、目ぇ覚ませって。うらたんだけはあかん」
センラはそれを言いたくてたまらなかったのだろう。口にした途端、苦しげに表情を浮かべながらも、どこかほっとしているようにも見えた。
そんなこと、頭では分かっていた。でも、この気持ちだけはどうしようもないのだ。そう言いたいのをぐっと喉の奥に押し込むようにビールを流し込んだ。
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あ(プロフ) - 初コメ失礼します。りひとさんの作品がとても大好きで過去作品も全て読ませて頂いております。続編もぜひ読みたいのですが、パスワードをお教えしてもらうことは出来ますでしょうか...？何分仕様が分からず、この場で聞くこと自体間違っていたら申し訳ありません。 (2021年2月10日 1時) (
レス) id: e8d9509923 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - あすかさん» 返信遅れてすみません。コメントありがとうございます。更新頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年12月14日 21時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
あすか(プロフ) - 初コメ失礼します！めちゃめちゃ面白くて見る度に評価押しちゃいます(笑)今1番を楽しみにしている作品です！更新頑張ってください(T_T) (2020年11月5日 21時) (レス) id: a6330c149b (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - いずりすさん» ありがとうございます。いつもと違うテイストに挑戦するので私自身もどきどきしています笑お楽しみいただけるよう頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。いずりすさんも体調には気をつけてくださいね。 (2020年10月14日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - Quuさん» ありがとうございます。お楽しみいただけるよう頑張ります。Quuさんもお体に気をつけてくださいね。今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年10月14日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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