強さ ページ39
ここ数日、Aは眠たそうにすることが多くなった。
夜に眠れていないのかと聞けば違うと返ってくる。けれど、朝もなかなか起きてこないし昼間はうとうとしている。
昨日は隣にいた坂田に寄りかかって眠っていて、坂田は化石のように硬直してしまっていた。彼は困惑と緊張の入り交じった表情でこちらに助けを求めてきたが、誰ひとりとして顔を真っ赤にした坂田を助けなかった。それどころか、いいネタができたと皆で笑っていたくらいだ。
彼女が安心しきった寝顔は、どうにもこちらまで穏やかな気持ちにさせる。それは全員同じようで、他の3人も同じような穏やかな顔をしていた。だからきっと、自分も同じなんだろうとうらたは思った。
坂田とセンラは今日、停泊している街に買い出しの荷物運びとして駆り出されている。うらたと志麻、Aは留守番を命じられていたのだ。
うらたの部屋は客室の中でも大きめの部屋で3人でも悠々とできる。やはりAは今日もソファに腰かけてうとうとしていた。
「A、そのケガどうしたん？」
志麻がそう言うと、Aは弾かれたように頭をあげた。本を読んでいたうらたは顔を上げてAを見る。
「え？」
「ほら、ここ。かすり傷になっとる」
志麻が彼女を案ずるように頬に手を添える。見れば、たしかに彼女の頬には傷ができていた。唇の端も切れている。どう見ても、誰かに殴られたあとだ。
「ほんとですか？いつ怪我したんでしょう。気づきませんでした」
Aは頬の傷を手で覆い、気まずそうに顔を伏せた。
「なんでもない？」
うらたは本を閉じてテーブルに置くと、Aのそばに寄って片手で彼女の顔をつかみ、乱暴に仰向かせた。
「この顔で？それじゃ、朝起きたらいきなり傷ができてたって言うのかよ」
それだけじゃない。よく見ると、彼女のケガは顔だけにとどまらない。腕にもアザがあるし、日に日にそういうケガが増えているような気がする。
「………ほんとに、なんでもないですから」
Aは床に視線を落として、妙に歯切れの悪い口調で言った。うらたは、ふん、と鼻を鳴らす。
「お前がたいしたことないって言うときは、たいていたいしたことなんだよ。もうちょっとうまい嘘のつき方を勉強しろ」
「うらたさん達には関係ないことですもん。ほんとに、なんでもないんです」
Aは強情だった。しかし、彼女が頑なになればなるほど、うらたと志麻の疑惑は深まっていく。
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りひと(プロフ) - 凍華＠ラさん» コメントありがとうございます。みなさまの応援のおかげで、ありがたいことにランキングに載ることができました。今後ともお楽しみいただけるよう更新してまいります。引き続きよろしくお願いいたします。 (2020年5月29日 19時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
凍華＠ラ(プロフ) - よくランキングに載っている作品だったので、少し気になって読ませていただきました。本当に面白くて、一気読みしてしまいました。続きが楽しみです。無理のない範囲での更新、頑張ってください！ (2020年5月29日 12時) (レス) id: 960374666f (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - over the rainさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけたこと嬉しく思います。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年5月26日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 続編おめでとうございます。題名に惹かれ読み始めてこらあっという間に3作品目でびっくりです。応援してます。 (2020年5月26日 6時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ありまさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しく思います。今後とも、何卒よろしくお願いいたします。 (2020年5月25日 18時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年5月24日 23時
