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夜、みんなが寝静まったあと。
Aはまた甲板に出た。
昨日と同じ気持ちいい潮風が頬を撫でていく。
奥のほうに、人影が見えた。昨日と同じシルエットだ。
今日は彼のほうが先だったようだった。
「今日も寝れないの？」
からかうような口調だった。まるで、Aがここに来ることを分かっていたかのように彼は振り向いた。
「……………船長だったんですね」
「月の妖精だよ。ここではね。それに言ったでしょ？いつもここに来るって。間違ったことは言ってない」
風が彼の髪をいたずらに遊び、なびかせる。ふわふわした髪が揺れて、月光に照らされている。
「で、答えは見つかったの？」
「………はい」
「まあ、あの4人にああまで言われたらそうだよね」
「聞いてたんですか？」
「一応、キリのいいところまで待ってあげたつもりだけど？」
どうやら、あの食堂での会話はほとんど全て聞かれていたらしい。恥ずかしくて部屋に戻りたくなる衝動に駆られたAに、さらに追い打ちをかけるように
「うらたくんたちはどういう意味で君が大事なんだろうね」
と投げかけた。
「………わかりません」
正直、Aにも分からなかった。けれど、自分が禁忌の子だから、エサだから生かされている訳ではないという確信が持てた。
「でも、いつまでも甘えてばっかりじゃダメなのは私でも分かります」
ここに居てもいいと、そう言ってくれた彼らの気持ちに応えたいと思った。
「…………そう」
「そらるさん、私、まずは自分で自分を守れるようになりたいんです」
あの4人を守りたいとは思わない。だって、彼らの方がずっと強い。他人を守ることができるのは、自分を守れる人だけだ。自分のことすら自分で面倒を見れないのは、そもそも話にならない。
大事なのだと言ってくれた4人に、自分を恥じたりしたくない。
だから、強くなりたい。
「………やっぱりおもしろいね、Aって。うらたくん達が見込んだだけある」
そらるはAの目を真っ直ぐに受け止めて、微笑んだ。潮風が吹き抜けていく。
「簡単な護身術くらいなら教えてあげる。明日の夜、またおいで」
「はい」
明日の夜からだと意気込んで部屋に戻ろうとしたAをそらるが引き止めた。
「言っておくけど、他の奴らには言っちゃダメだよ。月の妖精でいられなくなるから」
「…………いつまで続けるんですか、その設定」
月の綺麗な夜だった。
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りひと(プロフ) - 凍華＠ラさん» コメントありがとうございます。みなさまの応援のおかげで、ありがたいことにランキングに載ることができました。今後ともお楽しみいただけるよう更新してまいります。引き続きよろしくお願いいたします。 (2020年5月29日 19時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
凍華＠ラ(プロフ) - よくランキングに載っている作品だったので、少し気になって読ませていただきました。本当に面白くて、一気読みしてしまいました。続きが楽しみです。無理のない範囲での更新、頑張ってください！ (2020年5月29日 12時) (レス) id: 960374666f (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - over the rainさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけたこと嬉しく思います。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年5月26日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 続編おめでとうございます。題名に惹かれ読み始めてこらあっという間に3作品目でびっくりです。応援してます。 (2020年5月26日 6時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ありまさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しく思います。今後とも、何卒よろしくお願いいたします。 (2020年5月25日 18時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年5月24日 23時
