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「なにが悪くないの」
聞いたことのある声に、Aはぱっと顔を上げた。
「そらるさん、遅いですよ！」
まふまふが入ってきた人物に声をかける。そこに居たのは、昨日の夜に甲板で会った月の妖精だった。透き通るような肌に深海を思わせる瞳は、間違いない。
彼はAに気がつくと、口の端を少しだけ上げる。そして、すぐに視線を逸らして何事もなかったかのように
「ごめんごめん、さっき起きた」
とおどけた様子で肩を竦めた。
「あ、そういえばA、そらるさんに会うの初めてだよな？」
「え、あ、はい」
うらたに聞かれて慌ててAは頷いた。うらたは癖毛の男を指さすと、
「そらるさん、この船の船長」
とだけ言った。そらるも
「よろしく、A」
と言っただけだったが、おもしろそうに笑っていた。
「………Aです」
月の妖精なんて嘘なのは分かりきっていたけれど、まさか船長だったなんて。
「………で、なにが悪くないって？」
いちばん奥の席に座ったそらるが熱いコーヒーをマグカップに注ぎながらそう言った。
「俺たちに大事なやつができたって悪くないだろ、って話」
そらるがマグカップにたっぷりとコーヒーを注ぐと、彼はそれをひとくち飲んでからうらたを見た。
「悪くないけど、意外だね。前はもっとツンツンしてたのに」
「そうかよ」
うらたは拗ねたようにそっぽを向いて焼き魚にかじりついた。そんな彼の様子に、そらるはまたおかしそうに笑う。
「違う違う。いいと思うよ。変わらないものもあれば、変わるべきものもある。それは自然の摂理でしょ」
そらるは癖のある髪を少しだけ揺らしてまた笑った。
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りひと(プロフ) - 凍華＠ラさん» コメントありがとうございます。みなさまの応援のおかげで、ありがたいことにランキングに載ることができました。今後ともお楽しみいただけるよう更新してまいります。引き続きよろしくお願いいたします。 (2020年5月29日 19時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
凍華＠ラ(プロフ) - よくランキングに載っている作品だったので、少し気になって読ませていただきました。本当に面白くて、一気読みしてしまいました。続きが楽しみです。無理のない範囲での更新、頑張ってください！ (2020年5月29日 12時) (レス) id: 960374666f (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - over the rainさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけたこと嬉しく思います。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年5月26日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 続編おめでとうございます。題名に惹かれ読み始めてこらあっという間に3作品目でびっくりです。応援してます。 (2020年5月26日 6時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ありまさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しく思います。今後とも、何卒よろしくお願いいたします。 (2020年5月25日 18時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年5月24日 23時
