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「A、前に食べたいって言ってたプリン、作ったから食べへん？」
夕食後、声をかけてきたのはセンラだった。そういえば、魔物たちに攫われる前、そんな約束をしていた気がする。
「覚えていてくれたんですか？」
「もちろん。Aとの約束やもん」
彼は冷蔵庫を開けると、白い器に入ったプリンをふたつ持ってきた。見た目はどこにでも売っているようなシンプルなプリンだった。
「食べてみて。初めて作ったんよ、俺」
センラにしては、いつもより緊張した声音だとAは思った。彼からスプーンを受け取り、ひと口たべてみる。
「………美味しい。センラさん、すっごく美味しいです」
「ほんまに？」
「ほんとです。何個でも食べれそう……」
ミルクのコクと卵のまろやかな風味のカスタードプリンは、いくら食べても飽きないシンプルな味わいだ。
センラは安心したように笑うと、自分もプリンを食べ進めはじめた。
「次はなに食べたい？Aの食べたいもの、作るから」
次、という言葉を聞いて、Aは一瞬言いよどんだ。
医務室でまふまふは
「急に決めろと言われても大変でしょうから、考えてみてください。けれど、ルシファーに見つかるのも時間の問題です。そんなに悠長にしてられないのも事実ですよ」
と言っていた。その上
「この話は、うらたさん達にはしていません。どうか内密にお願いします」
と言った。まだ答えが出せていない。帰りたい気持ちも確かにある。けれど、センラたちを裏切ってしまうような気がしたのだ。こんな状態で、センラとの次の約束は軽々しく出来ない。
「………A？」
センラの声にハッと呼び戻される。Aは誤魔化すように笑うと、
「何がいいかなって考えちゃってました」
と言った。センラはまたふんわりとした笑みを浮かべ
「食べたいもの見つかったら教えてな」
と言うだけだった。
「センラさんの作る料理、どれも美味しいから悩んじゃいますね」
本当だった。センラの作る料理は美味しくて暖かかった。志麻は兄のように接してくれて、うらたは言葉には示さないがいつだって行動で示してくれた。坂田はいつもお菓子をくれて、真っ直ぐに想いを届けてくれた。
そんな優しい4人の悪魔を裏切るなんてことは、いまのAには出来なかった。
けれど、何度も死にかけて彼らには迷惑をかけている。きっとこのままじゃ同じことを繰り返してしまう。
一体、どうすればいいんだろう。
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りひと(プロフ) - 凍華＠ラさん» コメントありがとうございます。みなさまの応援のおかげで、ありがたいことにランキングに載ることができました。今後ともお楽しみいただけるよう更新してまいります。引き続きよろしくお願いいたします。 (2020年5月29日 19時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
凍華＠ラ(プロフ) - よくランキングに載っている作品だったので、少し気になって読ませていただきました。本当に面白くて、一気読みしてしまいました。続きが楽しみです。無理のない範囲での更新、頑張ってください！ (2020年5月29日 12時) (レス) id: 960374666f (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - over the rainさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけたこと嬉しく思います。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年5月26日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 続編おめでとうございます。題名に惹かれ読み始めてこらあっという間に3作品目でびっくりです。応援してます。 (2020年5月26日 6時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ありまさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しく思います。今後とも、何卒よろしくお願いいたします。 (2020年5月25日 18時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年5月24日 23時
