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「まふまふさん、教えてください。私には、なにが出来ますか」
自分はこの世界では無力なのだと改めて思い知らされた。
力もなくて、魔法も使えない。自分が禁忌の子で天使と人間のハーフなら、両親どちらかが天使ということになる。そんな話、父親から聞いたこともなかった。それに加えて、世界を左右するだの言われてもイマイチ実感がわかない。
なにも出来ないなら、何も出来ないなりにやるしかない。それと同時に、ただのエサでしかない自分に、どうして彼らはここまでしてくれるのだろうという思いがあるのも確かだった。
自分が下界を左右する存在だから。
だから彼らは助けてくれたのだろうか。
「Aさんは、どうしたいですか？」
「え……？」
「これは、そらるさん………この船の船長とも話し合ったことなんですが、僕達ならAさんを人間界に返すことができます」
Aは思ってもみない提案に、困惑した表情を浮かべた。それと同時に、帰りたいと思っていたはずなのに、なぜ迷っているのか、自分自身に驚く。それを知ってか知らずか、まふまふはそのまま言葉を続けた。
「うらたさんが魔法で消した記憶までは、戻すことは出来ませんが、Aさんが人間界に戻れば、おそらく世界の調整力が働いて、存在するための最低限の情報は戻るはずです」
「それって………」
ええ、とまふまふは頷いた。
「人間界で、前のような暮らしに戻れるということです。ただ、下界での記憶はなくなりますし、亡くなった方が蘇ることはありませんが」
Aはとうとう言葉を失ってしまった。
帰れる。最初に思っていた下界から人間界に戻れる。下界に来たばかりの頃の自分であれば、喜んで頷くだろう。それなのに、いまの自分はすぐに帰ると言えなかった。
それどころか、帰りたくないとすら思ってしまっていたのだ。
「………人間界に戻ったら、もう安全なんですか？」
無理に絞り出した声は、ずいぶんと細く震えていた。
「残念ながら。狙われるのは、人間界に戻っても、ここにいても変わらないかと。魔除のお守りは肌身離さず持っておいた方がいいでしょうね」
「そう、ですか………」
Aはどうしたらいいか分からなかった。せっかく、人間界に帰るチャンスだというのに、どうして喜べないんだろう。胸に雲のようなもやが覆い被さり、消化不良のようにいつまでも残っていた。
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りひと(プロフ) - 凍華＠ラさん» コメントありがとうございます。みなさまの応援のおかげで、ありがたいことにランキングに載ることができました。今後ともお楽しみいただけるよう更新してまいります。引き続きよろしくお願いいたします。 (2020年5月29日 19時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
凍華＠ラ(プロフ) - よくランキングに載っている作品だったので、少し気になって読ませていただきました。本当に面白くて、一気読みしてしまいました。続きが楽しみです。無理のない範囲での更新、頑張ってください！ (2020年5月29日 12時) (レス) id: 960374666f (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - over the rainさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけたこと嬉しく思います。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年5月26日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 続編おめでとうございます。題名に惹かれ読み始めてこらあっという間に3作品目でびっくりです。応援してます。 (2020年5月26日 6時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ありまさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しく思います。今後とも、何卒よろしくお願いいたします。 (2020年5月25日 18時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年5月24日 23時
