12*さらに怒らせてしまいました ページ12
「…Aちゃん、派手に喧嘩してますねぇ」
「あはは、朝から迷惑だったよね」
「ケンカップルって良いよね〜喧嘩するほど仲がいいって言うし!」
「ん〜、そうかな?」
『喧嘩するほど仲がいい』なんて嘘っぱちだ。根も葉も無い女子のことわざみたいな占いみたいなのって信用にならない。友人にその話をされる度にカチンと来てしまう。いっそ言ってやろうか。…いや、夢を壊したくない。
ケンカップルに、要注意。
甘く見てたら駄目なんだ。もう別れる決心はついていた。もういいんだ。辛いんだ。坂田くんの優しさにとぷんと付けられてから冷たい浦田の、腕の中に触れれる訳にはいかないのだ。…触れられないのだ。
『…なにそれ、なんで泣いてんの?』
あの時のどす黒く低い声にドロドロとした嫉妬と、少し掠れた声に不安が見えた。だけど、気のせいにしか思えない。彼女が泣いていてあの普通そうな顔してなんで泣いているのか聞いてくるのだ。坂田くんとか、センラくんみたいに優しくとんとんされたいのに。浦田にされたらどれだけ嬉しいことか。
「…ばかやろう」
「ん?なんか言った?」
「ううん。なんでもない」
焼きそばパンを口にくわえて窓から空を見た。モヤモヤとした曇り空は私の今の気持ちを表しているかのように今にも泣きそうに暗くどんよりしていた。
******
「…やっぱり降り出してる」
委員会が終わって雨が降ってないことを祈ったが浦田にも神様にも振り向いてもらえていないみたいだ。横なぶりの大雨に正面玄関に立ち尽くす私の足に床に弾かれた水滴が跳ねてくる。
天気予報も、嘘っぱちだ。
ほかのクラスの傘立てを漁るけどどこにも傘はない。置き傘コーナーを見てもみんな持って帰ってるみたいだ。傘には見えないボロボロの傘が数本だけ。これでは傘をさしてもさしてなくても意味が無い。今は、びしょびしょに濡れた方が気持ちいいや
何もかも流されて忘れ去って明日から普通に浦田と登校していつもどうりにご飯を食べて過ごしたい。とん、と1歩前に踏み入れた瞬間に前に出した足が濡れた。このまま走って帰ろう。もう一歩踏み出そうとした時、踏み入れても雨が当たらなくなった。
「雨降ってんの見えてない?」
「う、らた」
紺色の傘を私に少し倒してふいっと横を向く浦田。ちらっとこっちを見た時にばったり目が合う。…あぁ、やっぱりこいつ好きだなあって思う。
******
相思相愛ってやつ。
13*ぎくしゃく ぎくしゃく→←11*ケンカしてるだけ、別れてない。
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Leaf(プロフ) - あ、はぁ………尊い。 (2018年10月8日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
結月(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します!陰ながらずっと読んでおりました!凄く大好きな作品です^^*作者様のうらたさんのとても好きなので、また読める機会があれば嬉しいです。完結、おめでとうございます。 (2018年10月7日 11時) (レス) id: 286dc51d91 (このIDを非表示/違反報告)
めめ(プロフ) - maiさん» コメントありがとうございます。坂田さんの出番を少し増やしてみますね^^* (2018年9月28日 22時) (レス) id: b10484d3c8 (このIDを非表示/違反報告)
mai - ほんっとうにこの作品好きです!私は坂田家ですが、うらさんも好きなので楽しんで読んでます。坂田が出てくるとにやにやしてたり笑 (2018年9月24日 10時) (レス) id: 77b863b750 (このIDを非表示/違反報告)
めめ(プロフ) - 宮本 ?さん» コメントありがとうございます。世界中のこたぬき様へのプレゼントみたいな短編小説になればと思います〜! (2018年9月15日 23時) (レス) id: b10484d3c8 (このIDを非表示/違反報告)
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