秘密20 ページ20
変な空気だった。
残ったのは僕とセンラとうらさんとまーしぃの妹。まーしぃが放って行ったコップの中の水はまだ揺れていた。Aが座っていた隣のソファーを優しく撫でるとまだ温もりがあった。
「…志麻くんが居らんくなったのは好都合やね、2人何かあったん?」
センラが口を開いた。体が以上に反応してしまう癖が直らない。そこに継ぎ足すようにうらさんも口を挟む。
「ほんとに付き合ってんの?ふたり」
「そ、れは」
何かが心臓を穿いたみたいにズキっと痛んだ。なんやろう、この気持ち。
そもそもなんでAが出て行った時にまーしぃも付いていったん?まーしぃがついて行く必要あった?今、どこかでまーしぃとAが喋ってたら?あれ、そもそも僕なんでAとこんな事しとるん?
「つきあって、ない」
「まーしぃとAちゃんの繋がりは?」
「知らんし……そんなん」
「ふーん」
というかいつからまーしぃとAがそんな距離近くなったん?この春から初めて会ったんやろ?俺の方が2年も前に一緒に居ったんや。勉強教えて貰って、それで、たくさんお喋りした。
そう言えば最近まーしぃとAでお喋りしとるし、……俺より先にキスしてるし。付き合ってないとか言うし、まーしぃとおる時のA色んな顔する。いろんな表情する。笑ってるだけじゃない、俺とおる時は真面目な顔か、笑った顔しか見てへんかった。なんで?まーしぃ、何したん?
あれ?思い返せば返すほど溢れてくるこのモヤモヤは何?
「…__坂田、さーかーたー」
「あ、ごめんごめん!」
「もう今日は解散するぞ、俺が払う」
「ごちそうさんですうらたーん」
我に返るとうらさんは財布を持って帰る支度を始めていた。俺も慌てて支度して席を立つ。センラは嬉しそうに両手を擦り合わせていた。まーしぃの妹はペコりと律儀にお辞儀をして席を立った。
そのまま店を出て、各自家の方面へと別れ手を振った。俺は住宅地の道を曲がって何だか重たいこの気持ちを押さえて帰っていた。
フラフラとした足取りの人が前を歩いていた。酔ってるんか?にしてもこんな真昼から___あれ、この姿、もしかして
「………A?」
名前を呼ぶとふいっとこっちに顔を向けた。
ぼうっとした虚ろな潤んだ目と赤い頬、乱れた髪……変な想像をしてしまう。
なぁ、まーしぃとなんかあったん?
なぁ、俺にそのヒミツゴト、教えて?
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