3話 兄弟愛とは ページ3
私からしてみれば百パーセント悪意しか感じないその笑みも、客観的に見ると無駄に格好良いのが無性に腹立たしかった。時々、本当に私達は兄弟なのだろうかと疑うことさえある。
弟のどこに惹かれる女の子が多いのだろう。姉故に彼の性格をよく知っているせいか、最近そう考えることが多々あった。
兄弟の恋愛模様には全くもって関心はないが、むしろ望んで聞きたいとも思わないが、私の知る限り征十郎が特定の女の子と仲が良いといった噂は聞いたことがない。仮に聞いていたとしても、それ以上は追及しないだろう。姉は安易に弟の個人的事情に深入りしない方が、双方にとって吉なのだ。
男女問わず生徒からの信頼も厚い弟は、それなりに女の子達からの支持を多く集めているそうだ。だが、本人は全く関心がない様子だった。むしろ自ら拒んでいるような気すらする。
一回だけさりげなくその話題を振ってみたことがあったが、物凄く嫌そうな顔で「Aには関係ない」とばっさり言い捨てられた。それ以降私達兄弟の間で恋愛話はタブーになっている。恐らく私も家族に聞かれたら全く同じ反応をしていただろう。
……まあ、そんな外面だけの乙女心を何も知らない意地悪な弟を軽く睨んでいると、彼は私の視線に気付いたらしい。急に真面目な顔つきに戻り、私に向かって言った。
「A、そんなに眉間にシワを寄せてどうしたんだ?いつにも増して不細工だぞ」
「……私征十郎のそういうところが好きじゃない」
どうやら彼には、他人を気遣う優しさというものがないらしい。学校も含め、家での様子以外あまり詳しく知らないのであくまで対私の時のみかもしれないが。それでも、仮にそうであっても、もう少し兄弟を大切にするべきだと思う。
「……?別に俺はAに好かれなくても構わないが」
「……さいですか」
何を勘違いしたのか知らないが、悪気がなくただ純粋にそう言っている点が余計に私を惨めにさせる。
「……はあ。もうわかったから、部屋から出てってよね。私着替えるから」
ため息をつき、手でシッシッと追い払うようにして征十郎に言った。彼はきょとんと大きな瞳をこちらに向けた。
「別に今着替えればいいじゃないか。兄弟なんだから、俺が居ても問題ないだろう」
「大ありだよ馬鹿」
「安心しろ。誰もAの着替えを好き好んで見ようとなんてしない」
「さっきから姉に辛辣すぎない?」
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作者名:翡翠 | 作成日時:2019年5月26日 20時