6話 嫉妬の連鎖 ページ6
結局愛莉は体育館に顔を出しただけで、何もしない間に朝練の終了を知らせる予鈴が鳴った。
その上片付けも何も手伝わずに悠々と校舎内へ行くものだから、私の怒りは爆発寸前まで到達した。
「まあまあAちゃん。後で教室で全部話聞いてあげるから」
「……さつき」
そんな私に唯一寄り添ってくれるのは、後にも先にも桃井だけだった。本当に、彼女が同じクラスじゃなかったら私は誰に鬱憤をぶちまければ良いのかと最近考える。
「それにAちゃん程じゃないけど、私も愛莉ちゃんにはちょっと困ってるところがあるんだよね……」
「そうなの?」
少し意外だった。
「とにかく、早く荷物まとめて教室行こう。遅れると先生に怒られちゃうし」
「あ、うん」
私達は急いで体育館を後にした。
*
冷静に考えてみれば、私が愛莉と真正面から戦って勝てる訳がない。
まず第一に、顔で負けている。『可愛い』と言われたことはあるけど、所詮数回程度。おまけにその一言を一番言われたい奴には『不細工』とか『酷い顔』としか言われたことがない始末。
性格も全然女の子らしくないし、何せ不器用。強いて何か挙げるとすれば、桃井よりは料理が出来る点だろうか。つまり結局はそんなに出来ない。
そう、何から何まで『普通』なのだ。
当然、校内でも指折りの秀才で、女の子に大人気で、運動も出来るあいつには到底釣り合うはずがない。
赤司とは一応、部活を通じて去年からの付き合いになるが、未だに私は名字呼び。一方、愛莉は下の名前で呼ばれている。些細なことかもしれないが、結構差を感じたりするのだ。
彼女も彼女で、私と桃井は変わらず名字で呼び続けるのに対し、男子部員はほとんどが下の名前だった。私から見れば明らかに媚びを売っているように感じても、こういう時男は気付かない生き物らしい。満更でもなさそうな態度がその事実を妙に物語っていた。
ともあれ、結論を言えば全ての私の感情はただの『嫉妬』だ。それ以外の何でもない。
別に、何もせずただ相手を羨んで妬んでいるなんてそこまで醜くはない。
色々手を施した上で何も進展が得られず、路頭に迷った挙げ句突然現れた後輩に先越されそうになり危機感を感じて逆に開き直りかけているだけだ。
勿論、このままで良いなんて思っていなかった。しかし実際問題、現実は漫画のように全ての展開が上手くいくはずがないのだった。
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翡翠(プロフ) - 七奈那さん» コメントありがとうございます!返信が遅くなってしまい本当にごめんなさい!面白いといって頂けてとても嬉しいです。最近忙しくて全く更新できていませんが、早く続きを作るようがんばります! (2020年3月4日 0時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
七奈那(プロフ) - いいお話ですね。とても面白いです。早く続きが読みたいです!応援してます。完結するのが楽しみです (2020年2月11日 17時) (レス) id: 98ad0ce5fe (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 花音さん» コメントありがとうございます。この作品を読んでもらえてとても嬉しいです!最近更新できていなくて本当にごめんなさい。私も完結させたいので、また近いうちに更新できるよう頑張ります。引き続きよろしくお願いします。 (2019年11月6日 22時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
花音 - 作品読ませて頂きました。凄く面白いですね。もう更新なさらないのですか?できれば完結させて欲しいです。待ってます (2019年11月6日 21時) (レス) id: ac5c9fd8b6 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 黛夕那(#・∀・#)さん» コメントありがとうございます!読んでもらえてとても嬉しいです!なるべく早く更新できるように頑張りますね! (2019年9月1日 11時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年12月23日 16時