限りなく冷めたカップル【赤司征十郎】

11話　主将は秘密主義 ページ11

その日の午後。

私達バスケ部一同は、揃って主将の虹村に呼ばれた。

「……合宿、ですか？」

「ああ。二週間後の三連休で行くことになったから。お前ら準備しとけよ」

「……は、え？」

「返事は『はい』か『yes』だろ」

「……はい」

「よし」

帝光中の合宿とは、唐突にやって来て唐突に終わるものである。

去年の経験から言うと、短い期間で凄く内容が濃い合宿をする、という傾向がわかった。その時期はある程度決まっているようで、ほとんど不定期だった。

普通、夏休みなど長い期間中にやるものだと思う。と言うかほとんどの学校がそうだと私は勝手に思っていた。ただし、帝光バスケ部の場合一回の合宿が短い分頻度が多かった。

「……今回は、どこに行くんですか？」

赤司が恐る恐る聞いた。副主将なのに教えて貰っていなかったのかと思いつつ、私達も主将が次に言う言葉を待った。

すると虹村は、上を向いて下を向いた後、もう一度上を向いて深く一息つき、漸く口を開いた。

「……秘密だ」

「え？」

「だって、そっちの方が面白そうだろ」

ここまで引き延ばしたのにまさかの当日まで秘密スタイル。

虹村は何事もなかったかのようにさらりと言ってみせると、「話は以上だ。じゃあ、練習始めんぞ」と練習再開を宣言した。

三年生達は、不服そうな顔をしながらも渋々と練習の輪に入っていく。残されたのは、私達二年生と愛莉のみになった。

「合宿やる時って、毎回突然で困るんだよな」

青峰がため息を付いた。そんな彼とは対照的に、黄瀬は目を輝かせて「でも楽しそうじゃないスか、合宿！」と言った。

「遊びに行く訳じゃないぞ、黄瀬」

「わかってるっスよ、緑間っち。俺去年は行ってないから知らないけど、合宿ってどこに行くんスか？」

「特に決まってはいないよ。去年の夏は、海の近くの宿を借りていたけどね」

「じゃあ、もしかして海に入ったりとか出来るんスかね？」

「でもまだ夏じゃないじゃん。今海行っても寒いだけでしょ」

「それもそっか……」

恐らく今回は海ではなく山、虫嫌いな私にとっては地獄のような場所で合宿を行うのだろう。

海と来れば反対は山。大体そんなものだ。

「合宿かあ……。にしても、今年は色々大変そうだね」

「……だね」

私は少し複雑な反面、二年生になり初めての合宿に胸を躍らせていた。顔が緩みそうになるのを何とか抑えながら。

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