2話 喧嘩と嘘の裏表 ページ2
「……何で、いつも一人で来るの？」
どうしても会話を続けたくて、私は適当に聞いてみる。しかし赤司はそれに答えることのないまま、黙々とシュート練習を続けていた。
一瞬聞こえていなかったのではとも思ったが、暫くすると返事が返ってきた。
「……さっきも言ったが、俺は一人で練習がしたいんだ」
「ふーん、友達がいない訳じゃないんだね」
「……そう言うお前も、毎日一人で来ているじゃないか」
「そ、そうだけど……」
だったら一緒に登校する？
……なんて、口が裂けても言えない。
私は、この時間だけ二人になれるから敢えて誰とも登校していないだけ。敢えて。もしも一緒に登下校できる日がきたら、どんなに幸せだろうか。まあ、恐らく叶うことは無理に等しいけど。
「……皆、遅い」
学校に着て、十分が経過した。
未だに誰も姿を現さない。別に私は全然構わない。構わない、けど……。
もう話す話題が尽きたからさすがに一人くらい来て欲しい。このまま無言の状態が続くのはあまりに辛すぎる。
できれば同じマネージャーの桃井、もしくはキセキの世代の誰かが来てくれると嬉しいなと内心思いつつ、私はモップを片手に取る。
何もすることがないから、せめて赤司が使っていない半面のコートをモップがけしようと思ったのだ。
私がやるのは、恐らくというかほとんど気まぐれだと思う。いつもは桃井が掃除全般をやり、私が人数分のドリンクをせっせと作っているからだ。
一度だけ、桃井にドリンク作りを任せたことがあった。あの時の恐怖と絶叫は、今でも強く脳裏に焼き付いている。今後二度と忘れることはないだろう。
ともあれ日頃やり慣れていないせいか、広い体育館を半面モップがけするだけでも結構大変だった。結局、急いでやるよりちゃんとやろうと思い、途中から走らず歩いてやっていた。
半面をきっちりやり終えた後、自主練習にキリがついたのか赤司がボールを片付けていた。
「もういいの？」
「ああ。それに、そろそろ皆が来る頃だろう」
「……だけど、誰も来ないけど」
「時間までに来れば良い。遅刻すれば午後の練習を二倍に増やすだけだ」
「相変わらず鬼畜だね」
「何だと？遅刻する方が悪いだろう、当然だ」
「……そういう硬い考えばっかりしてると、いずれ嫌われるよ」
「言っている意味がわからないな」
私達は再び口論を始める。
……別に、あんたが何をしたって私が嫌いになることはないけど。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 259人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
翡翠(プロフ) - 七奈那さん» コメントありがとうございます！返信が遅くなってしまい本当にごめんなさい！面白いといって頂けてとても嬉しいです。最近忙しくて全く更新できていませんが、早く続きを作るようがんばります！ (2020年3月4日 0時) (
レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
七奈那(プロフ) - いいお話ですね。とても面白いです。早く続きが読みたいです！応援してます。完結するのが楽しみです (2020年2月11日 17時) (レス) id: 98ad0ce5fe (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 花音さん» コメントありがとうございます。この作品を読んでもらえてとても嬉しいです！最近更新できていなくて本当にごめんなさい。私も完結させたいので、また近いうちに更新できるよう頑張ります。引き続きよろしくお願いします。 (2019年11月6日 22時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
花音 - 作品読ませて頂きました。凄く面白いですね。もう更新なさらないのですか？できれば完結させて欲しいです。待ってます (2019年11月6日 21時) (レス) id: ac5c9fd8b6 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 黛夕那(#・∀・#)さん» コメントありがとうございます！読んでもらえてとても嬉しいです！なるべく早く更新できるように頑張りますね！ (2019年9月1日 11時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：翡翠 | 作成日時：2018年12月23日 16時
