1話 朝は恋の始まりにつき ページ1
『好き』。
たったその一言が言えたら、どんなに楽だろうかと毎日のように考える。
今日は絶対朝一で言ってやろう。……タイミングがないから休み時間に呼び出すか?いや、この際部活の時に……。
考えに考える内、気が付けば一日が終了しているのが最近の私の悩みでもある。
何故だろう。時間は余る程あるのに、チャンスは十分にあるはずなのに、毎回タイミングと心の準備が噛み合わずに終わる。
私の勇気が足りないのか?それとも、周りが邪魔してくるのが悪いのか?恐らく両方に原因があるのだろう。元を辿れば、私達をこんな関係にした、周りが悪いんだ。
*
「おはよう、七瀬。今日も一段と酷い顔だね」
「おはよう、赤司。相変わらず朝から人の悪口言うのやめてくれない?」
誰のせいで夜眠れないと思っているんだ。誰の。
私は心の中で悪態をつきながら、重い鞄を下ろした。
大抵、私の朝はこんな会話で始まる。目の前で私のことを小馬鹿にしたように笑っているのは、同級生の赤司征十郎。
いつの日からか、何とかして彼より先に学校に来ようと試みているが、私がどんなに早く来ても赤司は体育館にいた。
今日も、朝練が始まる三十分前くらいに学校に着いたが相変わらず一人で自主練習に励んでいた。
正直、何でそこまで真剣に取り組めるのかがよくわからない。根本的に、私と赤司じゃ頭のつくりから違うのだろうけど、純粋に不思議だなと思う。
……まあ、そんなところが格好良いんだけど。
「今日はまた随分と早く来たんだね」
「そっちこそ、いつも私より早い時間に来てるじゃん」
「俺は一人で練習するのが好きなんだ」
「何で?」
「その方が集中できるだろう?」
私の方を見ずに、赤司はシュートを放つ。彼のフォームはいつも綺麗で、つい動作を止めて凝視してしまう。案の定、ボールは見事な弧を描いて吸い込まれるようにゴールに入った。
すると、赤司は私の視線に気付いたのか、振り返りながら「……何見てるの?」と怪訝そうに尋ねてきた。
「……別に。誰もあんたのことは見てないから安心して」
「嘘つくな。見てたくせに」
「だから見てないって。何、逆に見てて欲しかったの?」
「違う。勘違いするな」
途端、赤司はムスッとしたように顔を歪めると、こちらに背を向け練習を再開した。
……ああ、これだから私は素直じゃない。
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翡翠(プロフ) - 七奈那さん» コメントありがとうございます!返信が遅くなってしまい本当にごめんなさい!面白いといって頂けてとても嬉しいです。最近忙しくて全く更新できていませんが、早く続きを作るようがんばります! (2020年3月4日 0時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
七奈那(プロフ) - いいお話ですね。とても面白いです。早く続きが読みたいです!応援してます。完結するのが楽しみです (2020年2月11日 17時) (レス) id: 98ad0ce5fe (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 花音さん» コメントありがとうございます。この作品を読んでもらえてとても嬉しいです!最近更新できていなくて本当にごめんなさい。私も完結させたいので、また近いうちに更新できるよう頑張ります。引き続きよろしくお願いします。 (2019年11月6日 22時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
花音 - 作品読ませて頂きました。凄く面白いですね。もう更新なさらないのですか?できれば完結させて欲しいです。待ってます (2019年11月6日 21時) (レス) id: ac5c9fd8b6 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 黛夕那(#・∀・#)さん» コメントありがとうございます!読んでもらえてとても嬉しいです!なるべく早く更新できるように頑張りますね! (2019年9月1日 11時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年12月23日 16時