46話 また明日 ページ47
朝練のことで頭が一杯になっている内に、気が付けば家の前まで来ていた。
何となくだが家から学校までの経路は覚えたので、これなら一人で登下校しても心配はなかった。今はまだ人混みに行くのが怖くて一人では無理だが、さすがに赤司に頼りっぱなしも良くない。
それに、たった登校二日で引きこもりだった私がここまで成長したことを誰か褒めて欲しい。
「じゃあ、また明日迎えに来るから」
「う、うん。ありがとう」
家が近い訳でもないのに、わざわざ送ってくれるなんて良い人だ……。
軽く手を振られたので、戸惑いながらも小さく振り返した。
するとその矢先、玄関が開いた。
「……あ、A。お帰り」
「りょ、凌兄!」
約半日振りに会えた兄の姿を見て、思わず私は抱きついた。
妹に抱きつかれるのはすっかり慣れてしまったのか、凌介は特に動じることなく私の頭を数回撫でた。
「一人で帰ってきたの?」
「ううん、赤司君と一緒に帰ってきたよ。ほら、そこに……あれ?」
「……誰もいないけど?」
さっきまで見えたはずの後ろ姿は、もう跡形もなくなかった。
私は「もしかして、急いでたのかな……?」なんて考えつつ、凌介から離れる。
「そういえば、凌兄はどうしたの?」
「ん、母さんに買い物頼まれたから、近くのスーパーに行ってくるところ。ついでに友達の家寄って来るけど」
「そうなんだ」
「あ、朱音ももう家にいるよ。父さんは今日出張で帰って来ないって」
「わかった」
私達の家は、超豪邸と言われるものの、ほとんど他の家と変わらない生活スタイルだと思う。
唯一少し家の敷地が広いだけであり、あとは至って普通だった。テレビや漫画に出てくるような万能な執事はいないし、使用人が何人もいる訳でもない。
全員が外出する時間帯の昼にだけ来る、お手伝いさんが数人いるだけだ。長年お世話になっているせいか、今では家族の一人だと私は思っている。
凌介が自転車に乗りスーパーの方向へ行くのを見届けてから、私はようやく我が家に滑り込むようにして入った。
「……ただいまあ」
深いため息をつくと、ちょうどリビングに続いているドアが開き、中から母の華蓮が顔を覗かせた。
「あら、Aちゃんお帰りなさい。大丈夫だった?学校は」
「ん……疲れた」
「後でお話聞くから、先にお風呂入ってくれる?凌ちゃんが帰って来るまでご飯の用意出来ないし」
「はい」
356人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
翡翠(プロフ) - モトコさん» ありがとうございます。がんばって更新します! (2018年11月3日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
モトコ(プロフ) - 続きが気になります。更新頑張ってください! (2018年11月3日 23時) (レス) id: e294c9830f (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - ゆっくりノワールクローンNo.1さん» ありがとうございます!これからももっと面白くしていきたいと思います!頑張りますね! (2018年8月14日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくりノワールクローンNo.1(プロフ) - ものっそい好みの作品です!!夢主ちゃん世間知らずで可愛いし間接キス知らないとかもう悶えちゃいます!!これからも更新頑張ってください!! (2018年8月14日 20時) (レス) id: a2e5a81f28 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます(*≧∀≦*)!!がんばりますね! (2018年8月1日 9時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:翡翠 | 作成日時:2018年7月12日 19時