43話 赤司の任務 ページ44
「え、っと……!」
「……」
両者一歩も動けず、その場で固まる。どうしたら良いのかわからず、慌てふためくのを通り越して最早沈黙だった。
二人より、外野の方が騒いでいた。
「大丈夫、Aちゃん!?」
「……それにしても、見事に漫画のような展開だな」
「え、何がどうなったんスか!?てか、赤司っち達もそこにいるんスよね?」
「ああ。お前達こそどうした?」
「へ、いや、俺らは普通に荷物まとめて帰る準備しようと思って部室に来ただけっスけど……」
「そうか。ならいい」
赤司は一人頷くと、未だに出入口の前であたふたしているAの手を引き、緑間から引き剥がした。
Aは驚いたように目を見開く。
「あ、赤司君……」
「いい加減帰るぞ、A。あまり遅いとAのご両親が心配するだろう」
「え、と、あっ……うん」
我に返ったかのように、Aは荷物を取りに行こうとした。しかし、ドアの前で行く手を阻まれ立ち尽くしている黄瀬達がいる為、思うように進めない。
そんなAを見て、赤司は桃井と静香に目配せする。
「桃井、櫻木。Aに一緒について行ってあげてくれ。それに、ずっとここにいるとこいつらも着替えにくいだろうから」
「あ、うん。わかった」
「俺は外で待ってるよ」
「あれ、今日は赤司っち俺らと一緒に帰らないんスか?」
心底意外そうな表情で、黄瀬が言った。
その質問に、全く表情を変えず赤司は答える。
「ああ。暫くはAと二人で帰ることになった」
「……へ?」
「別に一緒に帰ってもいいが、まだお前達はAとそれほど馴染んでいないだろうから、すぐには無理かな」
「いや、ちょ、待ってくださいっス!」
「話の先が読めないのだよ」
「?何がだ」
「え、てか、その子転入生っスよね?何でたった二日で赤司っちの彼女になってるんスか?」
「Aは彼女なんかじゃない」
「彼女じゃないなら尚更、変な子とかだったらどうするんスか?」
「俺にはそうは思えないが……」
どうやら黄瀬の中でのAの印象は、あまり良くなかったようだ。態度から、何となく赤司は察することが出来た。
しかし、他人が口出ししたところで、赤司がAと下校するという任務は変わらない。
一人で暗い道のりを歩かせたとちょっとでも犀川家の誰かの耳に入った瞬間、赤司を待つのは恐ろしい闇しかないのだから。
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翡翠(プロフ) - モトコさん» ありがとうございます。がんばって更新します! (2018年11月3日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
モトコ(プロフ) - 続きが気になります。更新頑張ってください! (2018年11月3日 23時) (レス) id: e294c9830f (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - ゆっくりノワールクローンNo.1さん» ありがとうございます!これからももっと面白くしていきたいと思います!頑張りますね! (2018年8月14日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくりノワールクローンNo.1(プロフ) - ものっそい好みの作品です!!夢主ちゃん世間知らずで可愛いし間接キス知らないとかもう悶えちゃいます!!これからも更新頑張ってください!! (2018年8月14日 20時) (レス) id: a2e5a81f28 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます(*≧∀≦*)!!がんばりますね! (2018年8月1日 9時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年7月12日 19時