44話 下校は尾行禁止 ページ45
数分後。
桃井達と共に荷物を入れたロッカーのある場所まで行き、赤司が待っているであろう体育館テラスへ小走りで向かう。
咄嗟だったのでわからないが、出入口をサッと通り抜けた時、少し鋭い視線が刺さったような気がした。
気のせい、ただ単に私の勘違いかもしれない。
しかし、そのせいか心の片隅に僅かながら恐怖心が芽生えていた。
「特に、あの黄色い人……」
「ん?何が?」
「えっ、ん、いや、……何でもない!」
「そう?」
だから、部室から出てきた赤司が一人だった時は、思わず安堵のため息が漏れた。
あの場でもし赤司が「皆で一緒に帰ろう」的な発言をしたら、私は一人でも良いから自力で帰るとすら考えた。
今の心持ちでは、親しくなれるものもなれない気がした。
「ご、ごめんね。待たせちゃって」と赤司に駆け寄りながら言うと、「大丈夫だよ」と優しい返事が返ってきた。
「それじゃあ赤司君。Aちゃんのこと、後は任せたよ」
「ああ、心配いらない」
「気を付けてね。もうかなり暗いし」
空は、ちょうど夕暮れ時の如くオレンジ色に染まっていた。つい先程まで明るかったのに、暗くなるのは思ったより早かった。
こんな時間まで外に出た機会がなかった為、何と言うか少し不安な気持ちが押し寄せる。
正直な話、私は暗いところと高いところだけはどう頑張っても苦手だった。ジェットコースターとか、お化け屋敷とか、遊園地の定番アトラクションはほぼ全部無理な人の一人だ。
ぎゅっと鞄を握りしめる傍らで、赤司と桃井は話していた。
「言っておくが桃井、くれぐれも変なことはしないように」
「えー、変なことって、何が?」
「そうだな……。後ろからこっそり尾行とか?」
「やだなー赤司君。私がそんなことする訳ないでしょ?」
「そうか。なら良いよ。あくまで例を挙げてみただけだ」
「あはは、笑っちゃうね」
そう言いながら笑みを浮かべる桃井だが、はっきり言って全く目が笑っていない。
赤司がそんな質問をするということは、過去に尾行された経験があるのだろうか?
変な妄想を抱いていると、隣から「A、行くよ」と声を掛けられた。
曖昧な返事をしつつ、私は先を歩く赤司の後ろ姿を追いながら、漸く帰路につこうとしていた。
「……明日会ったら、Aちゃんに色々聞き出そうっと」
そんなことを呟きながら桃井がこちらを微笑ましげに見つめていたなど、私はこの先知る由もない。
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翡翠(プロフ) - モトコさん» ありがとうございます。がんばって更新します! (2018年11月3日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
モトコ(プロフ) - 続きが気になります。更新頑張ってください! (2018年11月3日 23時) (レス) id: e294c9830f (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - ゆっくりノワールクローンNo.1さん» ありがとうございます!これからももっと面白くしていきたいと思います!頑張りますね! (2018年8月14日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくりノワールクローンNo.1(プロフ) - ものっそい好みの作品です!!夢主ちゃん世間知らずで可愛いし間接キス知らないとかもう悶えちゃいます!!これからも更新頑張ってください!! (2018年8月14日 20時) (レス) id: a2e5a81f28 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます(*≧∀≦*)!!がんばりますね! (2018年8月1日 9時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年7月12日 19時