37話 不器用な彼女 ページ38
掃除と大雑把にまとめても、色々ある。
私はまず、掃き掃除と床の雑巾掛けを中心にひたすら手を動かすことに集中した。だが、日頃からまめに行っているのだろう。特別目立つゴミやほこりは落ちていなかった。
桃井はその傍らで、使っていないボールを黙々と拭いていた。静香の方も、宣言通り別室でドリンクを作っているようだ。
暫く経つと、集中力が切れ始めた。体力の限界が近付いたのだ。
桃井に「体力切れるの早っ!」とまたも驚かれたが、割りと真面目に辛かった。慣れないことをしたせいか、余計にそう感じる気持ちが半分以上を占めていた。
「これ、……毎日やってる、の?」
「ううん。マネージャーは、今のところ私と静香ちゃんだけだから。曜日で決めて交代でやってるの。体育館の方にも、一人ついていないと駄目だしね」
「そ、そうなんだ」
「心配しないで!仮にAちゃんが入ったとしても全部やれなんて言わないし、基本私達もやらされるから」
桃井が冗談のように笑いながら言った。私も一応笑みを浮かべ同調したが、恐らくひきつってしまっただろう。
それから少し、休憩がてらバスケや学校のことについてあれこれ話した。
途中、バスケ部の面子の話題になった。
「えー、きーちゃん知らないの?」
「きーちゃん……?」
「黄瀬涼太君!モデルやったりして、結構雑誌とかにも特集されているんだよ。それなりに有名だと思うけど」
「私、ファッション雑誌とか全然読まなかったから……。流行りもよくわからないし」
「そうなんだ。意外かもね」
「私が読むって言ったら、大体凌兄の部屋にある医学用語が載っている本とか、変な生き物の図鑑とか、たまに海外の推理小説とか……くらいかな」
「やっぱり凄いね、Aちゃん。なんか、同級生だけど年の差を感じちゃうなあ……」
「え……」
桃井が何気なく呟いた言葉。彼女に全く悪気がないのは百も承知だったが、私の心には石のように重くのしかかった。
何となく、幼い頃の記憶がちらつくのだ。
今更引きずっていても仕方がないとは思うが、既に私の中には当時のトラウマが植え付けられており、簡単に忘れることは出来なかった。
……大丈夫。大丈夫。さつきちゃんは、あの子とは違うんだから。
極力感情を表に出さないように心掛けたが、上手く笑えていた自信はない。この時は自分のことに手一杯で、桃井が私を見ていたことに気が付かなかった。
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翡翠(プロフ) - モトコさん» ありがとうございます。がんばって更新します! (2018年11月3日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
モトコ(プロフ) - 続きが気になります。更新頑張ってください! (2018年11月3日 23時) (レス) id: e294c9830f (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - ゆっくりノワールクローンNo.1さん» ありがとうございます!これからももっと面白くしていきたいと思います!頑張りますね! (2018年8月14日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくりノワールクローンNo.1(プロフ) - ものっそい好みの作品です!!夢主ちゃん世間知らずで可愛いし間接キス知らないとかもう悶えちゃいます!!これからも更新頑張ってください!! (2018年8月14日 20時) (レス) id: a2e5a81f28 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます(*≧∀≦*)!!がんばりますね! (2018年8月1日 9時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年7月12日 19時