38話 あくまで内緒話 ページ39
気を紛らわそうと、再び雑巾を手に取った。
「……ねえ、Aちゃん」
「ん？」
突然、桃井が私の隣にしゃがみ込んだ。私は何となく手を止め、桃井を見つめる。
「……あのさ」
桃井の顔が少し暗く陰ったように見えたが、次の瞬間意味ありげな笑みを浮かべていた。
「Aちゃんて、どんな人がタイプなの？」
「……タイプ？」
「うん！」
私が首を傾げると同時に、桃井はどんどんと迫ってきた。何のことやらと尋ねる私に、彼女は更に言った。
「Aちゃん人見知りしちゃうけど、結構可愛いから普通にモテると思うんだよね」
「モテる？」
「うん」
少し考えた後、「……私、誰からも『好き』って言われたことないよ」と遠慮気味に答えた。
「ええっ？本当に？」
桃井が今日一番の大きな声を出した。そんなに驚くことか。告白される回数なんて、人生に一回でもあれば十分だと思う。
「あ……そう言えば、あーちゃんがいつも隣にいたから、皆私には目もくれなかった……と思う」
「あーちゃんって……Aちゃんのお姉さんだよね。私は見たことないけど、お兄さんも格好良かったもんね。やっぱり兄弟揃って美形なんだなあ」
「そ、そうかな……」
私が誉められるよりも、兄の凌介や姉の朱音ことを言われる方が純粋に嬉しかった。本人達の前で言うのは照れ臭いので絶対言わないけど。
なんて思っていたのも束の間、桃井は強引に話を戻した。
「でもさ、告白されたことはなくても、Aちゃん自身が好きな人はいないの？」
「え……いないよ」
そもそも、今までずっと家に引きこもっていた私に誰をどう好きになれと言うのか。
すると桃井は、「じゃあ皆の中だったら？」と食い下がる。皆とは、先程会った赤司達六人のことを指しているのだろう。私は勝手に良い悪いを区別してはいけないと思い、「わからない」とだけ答えた。
「まあ初対面だもんね。それに皆、顔はまあまあだけど性格がアレだもんなあ」
「アレって……？」
「なんかこう、癖が強いんだよね。あ、テツ君は別だよ」
「テツ君……」
桃井は黒子の話になると、途端に目の色を変えてあれこれ語りだす。黒子のことが好きなのかと思いつつ、でもそれを問う勇気もなく、私はただ黙って聞いていた。
彼等とはほんの僅かしか会っていないけれど、果たして上手く馴染めるだろうか。
そう考えていたら、心の中に少しずつ不安が押し寄せてきた。
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翡翠(プロフ) - モトコさん» ありがとうございます。がんばって更新します！ (2018年11月3日 23時) (
レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
モトコ(プロフ) - 続きが気になります。更新頑張ってください！ (2018年11月3日 23時) (レス) id: e294c9830f (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - ゆっくりノワールクローンNo.1さん» ありがとうございます！これからももっと面白くしていきたいと思います！頑張りますね！ (2018年8月14日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくりノワールクローンNo.1(プロフ) - ものっそい好みの作品です！！夢主ちゃん世間知らずで可愛いし間接キス知らないとかもう悶えちゃいます！！これからも更新頑張ってください！！ (2018年8月14日 20時) (レス) id: a2e5a81f28 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます(*≧∀≦*)!!がんばりますね！ (2018年8月1日 9時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：翡翠 | 作成日時：2018年7月12日 19時
