29話 部活動見学スタート ページ30
昼休み後の授業は、私にとってそれはそれは苦痛極まりないものだった。学校に通う以前の生活は、『昼ご飯を食べたらまず昼寝』が日課だった訳で。
何度も真面目に授業を受けようと試みたものの、結局睡魔に負けて寝てしまったらしい。目が覚めた時には、全ての授業が終了していた。
偶々一番後ろの席だったのが、不幸中の幸いとでも言うべきか。
「やっと起きたのか。俺も何度か声は掛けたが、全く起きる気配がなかったよ」
そんなに私は爆睡していたのだろうか、隣の席の赤司は苦笑しながら言った。その言葉を聞き、思わず机に突っ伏する。
もしかして、寝顔を見られただろうか。以前朱音に「Aの寝顔面白い」と言われたあの日から、何となく他人に見られたくないと思うようになっていた。
身内ならまだしも、同級生に見られていたらと考えると、やり場のない恥ずかしさに胸が痛くなった。
ホームルームが終わり、漸く待ち望んでいた部活動の時間がやってきた。
クラスメイト達が次々と教室を出ていく様子を、私は自席から遠巻きに見つめる。すると、後ろから誰かが肩を叩いた。
「よーし、準備万端!」
何故か私よりも意気揚々としている、桃井だった。
「早速行くよ、Aちゃん!」
「あ……で、でも鞄は……?」
「それなら大丈夫!私が使ってる部室のロッカーに、Aちゃんの荷物も一緒に入れておくから」
「あ、ありがとう」
用意周到すぎて、さすがと言う言葉しか出てこなかった。
「桃井。こっちも見に来るのか?」
「あ、うん。バスケ部は最後にしようと思って」
部活の用意を整えた赤司が、鞄を持ちながら桃井に聞いた。桃井は彼の問いに「その方が何かと都合が良いして」と答えながら、相変わらず笑顔を絶やさなかった。
「Aちゃんに一通り紹介が終わったら、私もそっちに戻るね。無理かもしれないけど」
「ああ、分かった」
じゃあまた後で、とこちらに向かって言うと彼は私達より先に教室を出て行った。私は何となくその背中を見送る。数秒後、桃井が私の顔を遠慮なしに覗き込んできた。
「……赤司君見てたの?」
「えっ、いや別に……」
「大丈夫だよ。赤司君達のいるバスケ部は後で見に行くから」
「う、うん」
じゃあ私達も行こう、と言う彼女の声に頷きながら、私は鞄を手に取った。
いよいよ、部活動見学のスタートだ。
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翡翠(プロフ) - モトコさん» ありがとうございます。がんばって更新します! (2018年11月3日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
モトコ(プロフ) - 続きが気になります。更新頑張ってください! (2018年11月3日 23時) (レス) id: e294c9830f (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - ゆっくりノワールクローンNo.1さん» ありがとうございます!これからももっと面白くしていきたいと思います!頑張りますね! (2018年8月14日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくりノワールクローンNo.1(プロフ) - ものっそい好みの作品です!!夢主ちゃん世間知らずで可愛いし間接キス知らないとかもう悶えちゃいます!!これからも更新頑張ってください!! (2018年8月14日 20時) (レス) id: a2e5a81f28 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます(*≧∀≦*)!!がんばりますね! (2018年8月1日 9時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年7月12日 19時