11話 何年振りの握手 ページ12
───場所は戻り、帝光中学校。
朝のホームルームも終了し、私の前には、クラスメイト達が遠巻きにこちらを見ている姿があった。話し掛けるタイミングを伺っているのだろうか。仕切りに周りを見ては、仲間内で何やら話していた。
……私はと言うと。
「……凌兄、無理。帰りたい」
「俺にばかり頼るな。自分で頑張れ」
「無理。やだ。帰る」
何故か先程より手厳しくなった兄と、言葉の格闘をしていた。私は最大限に駄々をこねる。
「だって、皆に見られてるもん!無理無理無理、もう家に帰りたい」
「少しくらいは自力で頑張れよ。別に、一人でも二人でもいいから、話しやすそうな子を見つければ良いじゃん」
「私から話し掛けるの?そんな高テクニックな技持ってないもん!それに、不特定多数のグループの中に単独で入っていくとか無理だから!」
「そういうことも身につけていかないと、将来社会に出てもやっていけないぞ」
……案の定、全て小声で行っていることである。私は、周りにバレないように凌介の服を引っ張っていた。……すると。
「……おい」
「ッ!」
声を掛けられた。───誰に?
声の主は、隣の赤髪の少年……否、赤司だった。赤司は、私の方を向いたまま、もう一度声を掛けてきた。
「……ひ、ひゃい」
初めてクラスメイトに声を掛けられ内心パニック状態に陥りながらも、私は何とか返事と捉えられるような返事をすることに成功した。この際、噛んだことはもう気にしない。
「……犀川、だよな?」
恐る恐る無言で頷く。
「俺のことは、聞いたか?」
よくわからないが、とりあえず同様に頷いておく。それだけ確認すると、赤司は軽く口角を上げ上品に微笑んでみせた。そして、さりげなくこちらに手を差し出した。
「赤司征十郎だ。宜しく、犀川」
「……?」
私は、訳がわからず凌介を見る。
……これは、つまり握手を求めていると言うことなのか?
「……」
私がその手を取るべきかと真剣に考えている間、痺れを切らしたのか彼は無理矢理自分から私の手を握り、軽く上下に振った。
「!」
何故か教室内から軽く悲鳴が上がったのが聞こえたが、この時ばかりは気を取られていて全く気にならなかった。
他人と握手をしたのなんて、何年振りだろう。しかも異性と。それこそ、四年……いや五年以上振りだ。私は、繋がれた手をじっと見つめた。
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翡翠(プロフ) - モトコさん» ありがとうございます。がんばって更新します! (2018年11月3日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
モトコ(プロフ) - 続きが気になります。更新頑張ってください! (2018年11月3日 23時) (レス) id: e294c9830f (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - ゆっくりノワールクローンNo.1さん» ありがとうございます!これからももっと面白くしていきたいと思います!頑張りますね! (2018年8月14日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくりノワールクローンNo.1(プロフ) - ものっそい好みの作品です!!夢主ちゃん世間知らずで可愛いし間接キス知らないとかもう悶えちゃいます!!これからも更新頑張ってください!! (2018年8月14日 20時) (レス) id: a2e5a81f28 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます(*≧∀≦*)!!がんばりますね! (2018年8月1日 9時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年7月12日 19時