10話 赤司家と犀川家 ページ11
某日。
赤司征十郎は、急遽父に呼び出された。
「……何ですか、父さん?」
父から呼び出されることは滅多にないので、赤司は少し緊張した趣で父の前に立つ。
「まあ、そう硬くなるな。座れ」そう言って、父は赤司に椅子に座るよう促した。素直に椅子に座る。すると、早速父の方から口を開いた。
「実は、少し頼みというか、相談があるんだ」
「相談……ですか」
赤司には何のことかさっぱりわからなかった。父は渋い顔をして軽く頷く。
「そうだ。……ところで、お前は犀川財閥を知っているな?」
「はい。テレビでもよく見かけますから」
犀川財閥。
日本でも有数の、代表的な企業をいくつも持っている、有名中の有名なグループだ。現社長の壮介と妻の華蓮は、揃って難関大学を卒業しており、さらにはその子供達も超優秀だとか、風の噂で耳にした。
赤司家とは、昔から親同士の仲が良かったそうで、今でも親密な関係を保っているらしい。
「いや……この間久しぶりに犀川の奴と話をする機会があったんだが。そこで、どうやら近いうちに三人目の子が中学校に通い始めると聞いたんだ」
「はあ……それで、僕にどうしろと?」
赤司には話の意図が読めなかった。父は、勿体振るように腕を組み直した。
「そこでだな。その子が学校で上手く馴染めるように、色々と手助けをしてやって欲しいと頼まれた」
「……僕がですか?」
赤司は目を見開いた。父はうむ、と頷き顎を手で触る。そんな話がされていたとは。
「何でも、その子は極度の人見知りらしくてな。ここ数年、まともに外も出ていなかったそうなんだよ」
「はあ」
「一人でも知り合いがいたら助かる、という彼奴の頼みでな。実はもう既に引き受けた」
「……え?」
「クラスは、犀川の奴がお前と同じにするよう頼んだらしい。恐らく来週から通わせるつもりだろう」
「それは……」
「まあ、お互い初対面だろうが、今後何かと気に掛けてやるようにしてくれ。話は以上だ」
赤司が呆然としていると、父は立ち上がり、自室に向かおうとした。途中、「言い忘れたが」と言いながら後ろを振り返る。
「……相手は、女の子だぞ」
そう言い残し、静かにドアを閉めた。残された赤司は、父の出ていったドアを呆然と見つめる。
「……え?」
……それは、俺に拒否権はないのだろうか?
思わず間の抜けた声が漏れた。
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翡翠(プロフ) - モトコさん» ありがとうございます。がんばって更新します! (2018年11月3日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
モトコ(プロフ) - 続きが気になります。更新頑張ってください! (2018年11月3日 23時) (レス) id: e294c9830f (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - ゆっくりノワールクローンNo.1さん» ありがとうございます!これからももっと面白くしていきたいと思います!頑張りますね! (2018年8月14日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくりノワールクローンNo.1(プロフ) - ものっそい好みの作品です!!夢主ちゃん世間知らずで可愛いし間接キス知らないとかもう悶えちゃいます!!これからも更新頑張ってください!! (2018年8月14日 20時) (レス) id: a2e5a81f28 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます(*≧∀≦*)!!がんばりますね! (2018年8月1日 9時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年7月12日 19時