1話 とある名門のお嬢様 ページ2
事のきっかけは、当時最も仲良くしていたある女の子に言われた一言だった。その日、私達はいつも通り家で一緒に遊んでいた。すると彼女は、独り言かと思う程に小さな声で、ぼそっと呟いたのだ。
「……Aちゃんて、何でも知ってるから、一緒にいてもつまんないんだよね」
彼女はその時、無意識に偶々口が滑ってしまったのだろう。その後も、私の前では何の変わりもなく振る舞っていたのだから。しかし当時の私は、その言葉に内心酷くショックを受けていた。
小さい頃から、私は両親に悉く愛されながら生きてきた。元から頭の良い家系だった為、娘が人より異常な程の速さでひらがなを覚えた時も、両親は気味悪がるどころか喜んだそうだ。
小学校に上がる頃は、もう高校の問題を自力で解いていた。兄の凌介や、姉の朱音の宿題を覗き込んでは、次から次へと勝手に答えを読み上げていたらしい。因みに、私の記憶には殆どない。
しかし、この犀川家。頭の良さは随一だが、それ以外の点ではまるで常識がない。普通なら不審がる状況を、全員が全員手を叩いて喜びを示した。
「凄いわね、A。流石私の妹だわ。きっと将来は弁護士とかになるんじゃないかしら?」
「いや、医者じゃないか?これから僕と一緒に医学の勉強をするのはどうだ、A?」
「まだ小学生なんだから医学は難しいわよ、凌ちゃん。やるならまず簡単に知識を付けないとね」
「それにしても、この子は本当に凄いな。将来は絶対うちの会社で働いてもらおう」
……こんな環境の中で育ったのだ。逆に、どうやってここから疑うと言う概念を見つけ出せば良いのか。この状況が他と違うと気付いたのは、小学三年生の時だった。
周りから一目置かれた目で見られ、同じ年齢なのに凄く歳の差を感じた。先生には特別扱い、誰の元へ行っても除け者にされる日々。そして、押し寄せる圧力と無言のプレッシャー。
それに耐えられなくなり、その内私は学校を休むようになった。学校に行かない時間は本当に快適で、わざわざつまらない授業を受ける必要もないし、毎日が天国だった。
*
───しかし、数年後。
ある日、父に呼び出された。その時点で、何となく嫌な予感はしていた。そして何を言われるかも。
「……A。お前ももう十四歳になったんだし、そろそろ中学校に行ってみないか?」
……ほら、やっぱり。
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翡翠(プロフ) - モトコさん» ありがとうございます。がんばって更新します! (2018年11月3日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
モトコ(プロフ) - 続きが気になります。更新頑張ってください! (2018年11月3日 23時) (レス) id: e294c9830f (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - ゆっくりノワールクローンNo.1さん» ありがとうございます!これからももっと面白くしていきたいと思います!頑張りますね! (2018年8月14日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくりノワールクローンNo.1(プロフ) - ものっそい好みの作品です!!夢主ちゃん世間知らずで可愛いし間接キス知らないとかもう悶えちゃいます!!これからも更新頑張ってください!! (2018年8月14日 20時) (レス) id: a2e5a81f28 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます(*≧∀≦*)!!がんばりますね! (2018年8月1日 9時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年7月12日 19時