五通目 ページ7
リボンと同じように質の良い紙に書かれた便箋を広げる
手紙なんて婆や以外から貰うことなんてほとんどなかった
「えぇっと.....拝啓、僕を救ってくれた....恩人へ.....?」
ドクンと心臓が激しく跳ねた音がした
彼だ
あの日倒れていた彼からの手紙だ
立ったままでいた私はすたすたとベッドへ向かい腰掛けた
どうしてもこの手紙は真剣に読んでみたかった
"拝啓、僕を救ってくれた恩人へ
突然手紙を送ってしまってすまない
僕が目を覚ましたあと宿のご婦人に君のことを聞いて手紙を出すことにした
あの鷹は僕の相棒だからあまり怖がらないで欲しい
まず、僕をあの日助けてくれてありがとう
本当に感謝する。僕はあのままだったら死んでいたかもしれなかった
会って感謝を伝えたい
いつか会うことができるだろうか
本当は君のいる所まで自分で手紙を届けに行きたかったのだけど、僕はまだあまり動けなかったから彼女に届けてもらった
あぁ、彼女っていうのはあの鷹のことだ。ヴァネッサという
あまりここに長居するつもりはないが、いつか会えたらと思う
明日、ヴァネッサに返事の手紙を取りに行かせよう
無理にとは行かないが返事が欲しい
敬具 ディルック"
力強くも華麗な時の手紙
「ディルック......」
彼の名前はディルック
整った字体に丁寧な文脈を見て、彼はどこかの貴族の類何ではないかと思ってしまう
"返事は明日"
便箋.....まだ残ってたかな
なかったらまずい、父の機嫌が悪い今、外に出してもらえる可能性なんて無いに等しいのだ
「会いたい......ね...」
今まで仲良くしていた友達も、街に人も、この言葉を私に投げかけることがいかに不毛かを理解している
会いたいなんて私がいくら思ったとしても、会えるか会えないかは私が決めれることではないのだから
そんな私の気持ちを汲み取ってか、みんないつの間にかこの言葉を言わなくなった
Aだってみんなに会いたいのだ
ひとりぼっちはもう嫌なのだ
だけどそれを許してくれるほど父は優しくなかった
正直に言おう、この言葉を投げかけられて本当に浮かれているということを
少しホコリが被った古い羊紙を手ではらい、インク壺にペン先を沈めた
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作者名:らっか | 作成日時:2022年7月3日 18時