二 ページ3
扉間様が研究熱心なお方だとは伺っていたけれど。
こんなに難しそうな本をわざわざこの図書館まで探しにお見えになるなんて。
まあ、里の図書館の多くは戦後に建てられた新しいものだから、資料が不足しているのも仕方のないことなのかも知れない。
そんなことを考えながら、自然と視線は扉間様の方へ向く。
真剣に本を読む横顔は、また美しくて。
見入ってしまいそうになり、慌てて本棚を見上げる。
ここは、図書館の書庫。
幾階にもわたって大きな本棚がずらっと並んでいて、その本棚の一つ一つに分厚い本や古い本がぎっしりと詰め込まれている。
扉間様がご覧になっている本は転生術に関する、ほかの図書館では取り扱っていない非常に古い本で、その貴重さゆえに書庫での閲覧はできても貸し出しはできない。
「このまま読み続けたいところだが、時間が過ぎておるな。貸し出しもできぬようだし…今日はこの辺で退散するか」
諦めたようにくすっと笑う扉間様に、私も苦笑しながら頷いた。
先ほどの本を本棚へと戻し、狭い階段をゆっくりと降りる。
「危なっかしいな、大丈夫か」
足元が覚束ない私を見かねて、扉間様が私の前へと出てくださる。
「なんだ、高い所が苦手なのか？」
「はい…高い所に行くと、ついつい下を見てしまって。立っている場所が安全だ、落ちない、とは言い切れませんし」
「ほう」
扉間様が苦笑する。
「そこから落ちないという証明が無いから、怖いということか」
「そうかもしれない…なんて。これは感覚の問題ですよ、言葉ではうまく説明できません…怖いものは怖いんです」
そうか、と扉間様は頷き、こちらを見上げる。
二人の足は、そこで歩みを止めた。
「だが、周囲を見回せば、美しい景色が見えたりもするものだがな」
「そうでしょうか…って、私にそんな余裕はありません。早く降りましょうよ」
「すまないな」
いたずらっぽく口角を上げた扉間様が、また階段を降り始める。
私は頬を染めながらむっとして、彼の後に続いた。
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K(プロフ) - あとがきを読んで泣いてしまいました...貴方様のお陰で、なんだか少し救われたような気持ちになりました。重たい感情で申し訳ないです...この作品を書いてくださってありがとうございます！！ (2021年3月30日 1時) (
レス) id: 29a0737890 (このIDを非表示/違反報告)
maho(プロフ) - 本当に素敵なお話でした！とても面白かったです！ (2020年8月5日 14時) (レス) id: ad2d13c9c0 (このIDを非表示/違反報告)
夜神 零彼 - もうなんか凄いですね！ 感動しました！最後のしまりが良かったです！ (2020年4月3日 17時) (レス) id: 84e498c4cd (このIDを非表示/違反報告)
如月 - おぉ！ありがとうございます！(*´∀｀*) (2019年1月18日 22時) (レス) id: 699e158105 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - 如月さん» ありがとうございます！なるほど、何か短いものを、思いついたら書いてみますね〜！ (2019年1月5日 22時) (レス) id: a22cf2b507 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：東雲 x他1人 | 作成日時：2018年5月14日 8時
