イルカは半分だけ眠る3 ページ23
「織田作、ちょっといいかな?」
「太宰か。どうした?」
「今夜、飲みに行こうよ」
「誘うなんて珍しいな。何かあったのか?」
私が行くと大抵、安吾か太宰のどちらか、又は両方がいる。
私達3人は示し合わせたように件の酒場で集うが、別に待ち合わせしている訳じゃない。
だから、お誘いなんて無いはずなのだ。
「うん、まあちょっとね。あ、安心して。飲み代は私が持つよ」
奢ると言いだした太宰は、基本何があっても奢る。
何とか言いくるめようとするが相手の方が一枚上手だ。此方が逆に丸め込まれてしまう。
逆らうだけ無駄だと長い付き合いで分かってしまったので、私は大人しく甘える事にする。
……まだ、年下に奢ってもらう事に恥じ入る気持ちは多少あるから!
「それは助かる。安吾も呼ぶか?」
「いや、いい。安吾は呼ばないで。二人だけで楽しみたいんだ」
なんだろう、この違和感。
何故そんなに頑なに安吾を拒絶する?
そりゃ、安吾は裏切り者だろうけど、まだ事が明るみに出てないから、それまでは友好的に行こうスタンスだったじゃん。
はっ、もしや私が転生者ってばれた……? んで織田作は何処にやったって問い詰める(拷問)シーンを実現しようって魂胆か!
いや、でも何処でバレるタイミングがあっただろう。
ここで断るのも変なので太宰の誘いに肯く。
というより、有無を言わせない何かが太宰にはあった。
「よかった。じゃあいつもの酒場で」
そこだと安吾も来るかもしれないが、いいのかそれで。安吾は交たくないんじゃないのか。もし本当に安吾を拒絶したいなら、別の酒場に変えればいい。太宰ならその程度の見通しはついている。
……まあ、
いろいろ考えたって仕方ない。どうせ全て今日の夜に問い詰めればいいのだから。
翌日、私は先刻の甘い考えを後悔することになる。
だがよくよく考えてみたら、太宰が何の意図もなく、何の算段も無く私を酒の席に『誘う』(よっぽどじゃないと誘われない。誘われなくてもソコソコの頻度で酒場に行くからだ)なんてありえないだろう。その時点で気付けよ私。
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翡翠 - 凄い文章力の羅列…裏山しいたけ(古い)何なんだ !あなたは !天才か! ?文豪じゃないのk(( はい。これからもどうか、頑張っていってください !更新を心待ちにしております!!! (2019年12月11日 1時) (レス) id: 72fefee69b (このIDを非表示/違反報告)
らい - 面白い........!これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年8月9日 2時) (レス) id: 3b0d55ccc1 (このIDを非表示/違反報告)
チューリップ - 織田さんの成り代わりある様でないですよねぇ〜。更新待ってまーす (2019年4月4日 1時) (レス) id: 8fad14733d (このIDを非表示/違反報告)
ひな - とっても面白いです!更新楽しみにしています。頑張って下さい! (2018年12月3日 15時) (レス) id: 81fb36e344 (このIDを非表示/違反報告)
世桜 - 凄く面白くて、一気読みしました!!細かな心情が描かれていて、続きが気になります。更新心待ちにしています。頑張って下さい! (2017年4月10日 0時) (レス) id: f27162b486 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まあじ | 作成日時:2016年6月12日 11時