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イルカは半分だけ眠る4 ページ24

私はノコノコといつもの酒場へやってきた。
「やあ、織田作。待ってたよ」
「すまない、遅かったか?」
「そんなことないよ。ほら、座って。オーナー、お酒お願い」
これでも早く来たつもりだったが、太宰の方が早かったようだ。
……太宰、仕事やってきたのか?
もしほっぽらがしているとしたら……ああ、頑張れ中原中也。

「今日はどうしたんだ?」
「いや、久しぶりに織田作と二人で飲みたいなって思って」
最近、安吾を含めて三人が多かったでしょ?
と続けた太宰。
まあ、言われてみればそうか。
前世の、原作の記憶を太宰も持っている。
原作読んでいればわかると思うが、太宰的には坂口安吾は裏切り者で、許し難い存在な筈。
そりゃ、まあ今回は何もやってないとは言えど同席したくない気持ちも分からなくもない。
私は安吾の事は割と好きだけども。

だが、原作通り安吾を引っ張って来たのは太宰だ(私も協力したが)
憎んでる相手に好んで会いに行こうなんて思うだろうか。

太宰の言葉に対して私は
「そうか」
と一言言って酒を煽った。
「ん」
え、なんか度数強くない? いつもの酒じゃなくない?
「どうしたの?」
太宰が尋ねる。
「いや、すまない。思っていたより度数が高かったようで驚いただけだ」
ヒリヒリと喉を焼くようなアルコールに違和感を覚える。
今までこんなの出されたっけ?え、今日だけ特別?
「ああ、今日ちょっとオーナーに頼んで良いお酒を用意してもらったんだよ。どう、美味しい?」
太宰なりの好意か。断りづらいな。
「ああ」
まあ確かに美味しかった。かあっと喉は焼けるが飲みやすい味だ。高いだけの事はある。
いくら、なんて聞くのは野暮だ。どうせ私には分不相応な値段なのだから。
「よかった。一本頼んだから、よかったら呑んでってよ」
マジか。 酔い潰れるぞ、私。多少は酒に強い自信あるけど。
「酔い潰れると思うが」
「いいって。織田作、安吾といると全然呑んでないじゃん。今日ぐらい潰れなよ」
そう、でもないが。安吾といる時も飲んでるつもりだ。
……いや、抑えているな。私は酔うのが怖い。ボロが出そうで。
だが、最近はいたって普通に織田作になりきれるようになってきた。だからボロも出さないんじゃないか?
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
私はグラスに入った美味しい酒を一気に煽った。

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翡翠 - 凄い文章力の羅列…裏山しいたけ(古い)何なんだ !あなたは !天才か! ?文豪じゃないのk(( はい。これからもどうか、頑張っていってください !更新を心待ちにしております!!! (2019年12月11日 1時) (レス) id: 72fefee69b (このIDを非表示/違反報告)
らい - 面白い........!これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年8月9日 2時) (レス) id: 3b0d55ccc1 (このIDを非表示/違反報告)
チューリップ - 織田さんの成り代わりある様でないですよねぇ〜。更新待ってまーす (2019年4月4日 1時) (レス) id: 8fad14733d (このIDを非表示/違反報告)
ひな - とっても面白いです!更新楽しみにしています。頑張って下さい! (2018年12月3日 15時) (レス) id: 81fb36e344 (このIDを非表示/違反報告)
世桜 - 凄く面白くて、一気読みしました!!細かな心情が描かれていて、続きが気になります。更新心待ちにしています。頑張って下さい! (2017年4月10日 0時) (レス) id: f27162b486 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まあじ | 作成日時:2016年6月12日 11時

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