【過去編】苧環【ぬらりひょん】

計り知れぬ怒り ページ29

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夜、ぬらりひょんは宣言通りAたちの屋敷へと足を運んでいた
Aの返答を聞きに来たのは当然だが、また好いた女に会えるという事実がぬらりひょんの胸を高鳴らせる

いつもながら入り込みやすい珱姫の部屋から踏み込む




「珱姫、ちと邪魔するぜ。A姫は…………」




自然と出てしまう笑みを浮かべながら入ったものの、目の前の光景にその笑みが消え去る


いつもなら綺麗に整った珱姫の部屋
しかし目に映ったのは血で濡らされ、何者かに荒らされた痕跡のある、いつもの部屋とは似ても似つかぬ部屋
そしてその部屋で力無く膝をついている陰陽師

鼻につく血の匂いからして殺された人間は一人二人どころではない
恐らく、屋敷の者全員が殺されてるだろう




「………………なんだ……これは……」




ぬらりひょんの言葉に、呆然としていた陰陽師がゆっくりと振り向く




「お前は…ぬらりひょん………そうか……
姫様方の部屋の微かな妖気はお前だったか……」

「………んなこたどーでもいい。
珱姫は…A姫はどこだ！？」

「貴様らの仲間じゃないなら………
姫様たちは妖につれていかれたよ…………」

「A姫たちを狙う妖……」




生き胆信仰の妖か…？




「そいつらはどこへ…」

「大阪城……………」

「！」




─────羽衣狐か！！！




ぬらりひょんは部屋にぽつんと落ちていた刀を拾い上げると、力強く床を蹴り屋敷を飛び出していった





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