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ブレーキを上げる音、それは病院に到着してしまったことを告げる音でもある。
助手席に張り付いて、カウンセリングを拒否していると、
林は私の背中を撫でながら、窓の外の誰かと話している。
少し顔をあげてみると、そこにはカウンセラーの梁川実夢先生が…。
実夢先生は私側のフロントガラスに移動してきて、
林が強制的に私側の窓を開ける。
「一ヶ月ぶりだね、元気だったかな？」
無視をしていても、実夢先生は話しかけてきてくれた。
林は黙って私の頭を撫でてくるだけだ。
「最近はお散歩してるんだってね〜、�眈訐萓犬�ら聞いたよ」
「今日はカウンセリング室に行きたくないかな？守本先生と一緒なら来れるかな？」
林の方を見ると、一緒に行ってみるか、と手を出してきた。
私は林が近くにいてくれるなら、
林に再度頭を撫でてもらい、車から出ることができた。
カウンセリング室――
「どうぞ、いらっしゃい」
カウンセリング室、カフェのような珈琲の匂りが広がる。
壁にはお人形などがたくさんある、柔らかい優しい雰囲気が漂う部屋の前に必死に抵抗する私の姿。
「大丈夫、今日は俺も一緒だ。ほら入って」
林と手を繋いで、部屋へゆっくりと入る。
ソファに林と一緒に腰を降ろして、
別の椅子に座る実夢先生を見る。
「じゃあ、まず腕見せてもらおうかな〜、痛くしないから大丈夫。嫌なことはしないよ」
ゆっくりと左腕を出すと、
実夢先生は私が自分でつけた傷を治療し始めた。
前のカウンセリングでは、
深くやりすぎた傷が多くあったため、
次はやり過ぎないように、と言われてしまったため、
やりすぎは気をつけて過ごした一ヶ月。
「前の月よりかは、良くなっているよ。よく頑張ったね」
実夢先生が撫でようと私の頭に手を伸ばした。
撫でられるだけだとわかっていても、
反射的に叩き落としてしまい、林の胸に顔を埋め込む。
「すみません、大丈夫でしたか？」
「大丈夫ですよ、守本先生はAさんにとって、安心できる居場所になってますね」
「Aさんの体の傷は良くなってますから、後は心の傷をどうするかですね」
「心の傷ですか…」
「はい、徐々に良くしていきましょう。突然治るものでもないですから」
カウンセリングは終了。
あとはカフェに行くだけだったのだが、
疲労で頭痛が酷くなり、今日は行けなかった…
「また、後日な」
「ぜーったいだよ！林も一緒！」
「わかってる、今は安静にしてろ」
「はーい」
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作者名：湯玉 | 作成日時：2022年6月19日 17時
