月一カウンセリングは戦いである。 ページ8
今日のAは少し不機嫌だ。
原因は今日、月一のカウンセリング日なためだ。
「行かない！ぜーったい行かないから！」
こうなることは毎度のことなため、
仕事を休んで付き添うのだが、
Aは人に自分のことを言うことが苦手で、
それを要求させられる時間が大嫌いなのだ。
カウンセラーはうちの病院の者で、別に強制的ではない、人気のある先生だ。
「話したくないことは、話さなくてもいいんだぞ？」
「でもずっと話される…疲れるじゃん！外出たくない！」
抱き上げて車にのせようとしたが、ソファに張り付いて離れないA。
しかし、引きこもりでか弱いAは、
外へちゃんと出て動いている人の力は敵わない。
力業で抱き上げた。
「行きたくない…」
「ハイハイ、行くぞ〜」
助手席に座らせても、自分でシートベルトもつけずに力を抜いているA。
そんなAに苦笑いでシートベルトをつけてあげる。
すると、シートベルトを即座に外すA。
こんな行動を繰り返しても意味がないため、
Aを説得することにした。
「今日頑張ったら、たっくさん褒めてあげるから」
「…」
「終わったらどこ行きたい？」
「…いつものカフェ」
「わかった、終わったら寄ろうな」
「…ん」
応援する気持ちで頭を撫でると満足したのか、
自分でシートベルトをつけ、
後部座席に用意している膝掛けにくるまった。
「出発するぞ」
膝掛けで顔は見えないが、
Aは自分と戦っているのだろう。
出来るだけつくまではそっとしておこう…
今、俺にできることは安全に病院へと送ること。
病院まで後、数十メートル――
カーナビが病院まで残り少しのことを伝えると、
助手席にくるまっているAが反応した。
いつものカウンセリング野関門は、
まず家から出る、次に車に出る
最後はカウンセリング室に入れるかだ。
最難関は車から出させること…
カウンセリングがあとに控えているため、
あまりAの精神的な体力は消費させたくはない。
心療内科付近の駐車場につき、
ブレーキをかけるとAはついたことに勘づいたのか、
助手席を抱きついて、ここから出ませんと身体で主張している。
「行こうか『嫌だ』嫌だなぁ…、でもこれが終われば一ヶ月はないだろう？」
「明日にするの！」
説得を試みるも、
涙目になりつつあるAには効果がなく、
車から出るつもりもない様子だ…
背中を撫でながらどうしようかと考えていると、
そこへ救世主が現れた――
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 11人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：湯玉 | 作成日時：2022年6月19日 17時
