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――診察室
「どうぞ、入って〜」
Aが逃げないように修、A、俺の順で診察室に入る。
Aを椅子に座らせると、身体が強張っている。
修も俺の方を向いて苦笑い。
身体の警戒をといてあげないと、診察できなそうだな…
頭を撫でてあげると、俺の方へ寄りかかってきた。
後は修が緊張をとくしかないな…
修に目配りすると、修は明るく話しかけ始めた。
「Aちゃん、最近は暑いね〜夏バテしてない？」
「…林と散歩行くのでｺﾞﾎｯ」
辛うじて聞こえる声で、質問に答えるA。
しばらく修は笑顔で会話を広げげいると、
Aも緊張が徐々に減ってきたのか、
話すようになってきた頃。
それを見計らって聴診器を修が出すと、
Aはそれを見逃すはずなく、脱走しようとするが、
すぐさまAを固定する。
修は笑いながら、大丈夫だ、と宥めているが、
それはAにとって、
悪魔の笑みと囁きにしか聞こえてないはずだ…
聴診器を手で暖め、修が診察を始める。
Aは抵抗が出来ないことがわかり、
大人しく診察されていたが、診察が終わる頃には、
俺の身体に顔を埋めて、完全に拗ねていた。
「修、ありがとうな」
「いえいえ〜」
「Aちゃん、もうしないから大丈夫だよ〜またおいでね」
「…」
「A…子供じゃないんだから、感謝の言葉ぐらい言え」
「…ありがとうございました」
診断はストレス性の喘息…
急に外に出たりと、環境の変化によるものだそうだ。
とはいえ、全く外に出ないのは不健康なため、
少しずつ体になれさせる方がいい、と修は言っていた。
俺はこれから仕事だが、Aは一人で帰れないため、
個室の病室で休んでもらうことになった。
「よく頑張りました、仕事終わらせてくるから」
「いい子で待っててな」
「…出来るだけ早く来て」
「ハイハイ」
昼には看護師も受け付けないA、
そのため、Aを知っている医師か、
俺が持ってくることになる。
この拗ね具合だと、他の医師も受け付けなさそうなため、
俺だろうな…
外来が一通り落ち着いた午後、
修が昼休憩にナースステーションで話しかけてきた。
「いいだろ！Aちゃんに描いてもらった！」
と、A絵が修の手にあった。
謎に医師の人気が高いAは、修の絵自慢によって、
病院にAが要ることが医師に伝わり、
休憩がてらに会いにいく人が、この一日多かったらしい。
お陰で一緒に帰るときには、
車の中で熟睡していたAだった――。
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作者名：湯玉 | 作成日時：2022年6月19日 17時
