【国木田独歩】理想とは程遠い恋【文スト】

第38話 大切な人と命日 ページ39

『あれ？国木田さん･･･今日はいないの？』


空いた国木田さんの席を見て、敦君に尋ねる。


中島「ええ、出かけているみたいです」

『そっか･･･』


溜息を吐いた。

折角谷崎君に教わって、マフィン作ってきたのになあ･･･。
毒見･･･いや、味見してほしかった。


谷崎「そういえば、確か今日ッて･･･」

太宰「･･･ああ、そうだね」

『え、今日、何かあるんですか？』


意味深な会話をする谷崎君と太宰さんに訊く。
すると、太宰さんは云いにくそうに云った。


太宰「今日ね･･･命日なんだよ。国木田君の、大切な人の」

『･･･大切な人の･･･命日？』


ドクンッ、と心臓が飛び跳ねた。

大切な人って、一体誰なんだろう･･･。
私の知らない人、かな。

それに、命日って･･･。


太宰「この人達･･･田口六蔵君と、佐々城信子さんだ」


見せられた写真には、齢十四歳ぐらいの少年と、美しい顔立ちの女性が写っていた。


『この人達は･･･』

太宰「国木田君と私が担当した事件の犠牲者だよ」

『そう、ですか』


空気が重い。

私は、二人の写真から目が離せなくなっていた。


太宰「この事件の事は、国木田君に訊いた方が良い。･･････君になら、教えてくれる筈さ」

『･･････はい･･･』


そう、返事をするとほぼ同時に。


国木田「おい、Aに太宰。仕事はどうした」


･･･国木田さんは、帰ってきた。

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