【国木田独歩】理想とは程遠い恋【文スト】

第19話 倉庫街と逃走 ページ20

『国木田さん！』


人っ子一人いない、倉庫街。

そこにぽつんと国木田さんが血塗れで倒れていた。


国木田「･･･Aか？何故、此処に･･･」

『応援要請がきて･･･国木田さん達が危険かもしれないって･･･それで･･･』


国木田さんの手を握る。

･･･脈が弱い。
かなり危ない状況･･･早く、連れて帰らないと･･･！


国木田「帰れ」

『･･･え』


手を振り払われる。

キッと眉を釣りあげて、国木田さんは言い放った。


国木田「お前がいても足でまといになるだけだ。社に戻っていろ」

『でも･･･』


傷ついている国木田さんを置いて帰るなんて、出来る訳･･･。


男「お、まだ倒れてやがる」

男2「いや･･･女が増えてるな。どうする、連れて帰るか？」

『なっ･･･』


だ、誰この人達･･･。

若しかして、この人達が国木田さんを･･･！？


国木田「くっ･･･こんな時に･･･」

『く、国木田さん！立ったら駄目です！･･･血が･･･』


よろよろと立ち上がる国木田さんの腕からは血が滴っている。
アスファルトで舗装された地面を血が赤く染めていった。


国木田「･･･逃げろ、A」

『でも、そうしたら国木田さんが･･･』

国木田「逃げろと云っているのが分からんのか！どうしてお前はいつも俺を怒らせるんだ！」


辺りに、国木田さんの怒号が響く。
そして国木田さんは、苦しそうに歯を食いしばった。

･･･怒鳴るだけでも苦痛なんだ。

これ以上、国木田さんに負担はかけられない･･･。


『･･････ごめんなさい･･･』


私は、逃げ出した。





･･････ごめんなさい、国木田さん。

第20話 勇気と危険→←第18話 応援要請と願い

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す