55:才能 ページ6
.
駅に着き、雨宿り。
びしょ濡れの彼らはAに渡されたタオルで体を拭いていた。
『ほら2号。風邪ひいちゃうよ、おいで』
「それは君もですからね」
『ありがとう、テツヤ』
2号を拭くAの頭を黒子が拭くという謎の一列。
もはや彼の面倒を黒子が見ているのはもう慣れっこだったため、誰もツッコミはしなかったが。
「やけに険悪な挨拶だったな。仲悪いのかよ？」
「そんなことないですよ。人としてはむしろ好きです」
たしかに、黒子に対しての挨拶が少し険悪だったような気もした。
だからそれが気になって、火神が代表して聞いたのだろう。
だが、別に彼らは仲が悪いわけではない。
普段は、であるが。
「ただ、選手としてはお互い気が合いませんでした」
なぜなら彼は、バスケ自体が好きではないから。
ほとんどの人間、好きであるから一つのことを続けられるものだ。
才能があればまた楽しさを見出せるし、面白さだって感じられる。
だが全員がそうではない。
得意であるからこそ、そうは思えない人間がいるのだ。
紫原がバスケを始めたきっかけは、月並みに、人より体が大きかったから。
小学校で始め、それ以来ずっとCをやってきた。
彼は、好きではなくとも、天才だったのだ。
やる気がなくてもできてしまう。
そうしてバスケを続けていく内に、バスケに興味がないままCとして圧倒的な選手になった。
だから才能があれば好きである必要はないと思っているし、逆に好きでない奴は見ていてイライラすると言うのだ。
「だけど、Aには優しかったよな」
『ああ、それはずっとそうなんだよ』
別に、Aにバスケの才能があるから認めているわけではない。
それに、紫原はそういった人間ではないわけだし。
ただ、彼がAにそれなりに優しく接するのは理由があった。
『言ってたろ？ 敦は征十郎に言われれば試合も出ないような奴なんだ』
「そう、だけど」
『オレに当たると征十郎は怒る。だから優しくされてる、それだけだよ』
全ては征十郎がそうしろと言ったから。
体が弱いからとはそう言った理由ではない。
本当は、何の理由もないのと同じなのだ。
『まあ、同情でもなんでも。オレは敦のことが嫌いじゃないから、それでいいんだ』
紫原だってそう。
彼はAのことを人としてだって嫌っていない。
同情でもないはずだ。
そんなこんなしていると、火神の携帯が鳴った。
何やらリコが突然の招集をかけたらしい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 187人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちさ子(プロフ) - 明後日打ったんで誤字になってて恥ずかしいです〜！！こちらこそレスありがとうございます！ (2019年12月19日 9時) (
レス) id: 62cdfd78f2 (このIDを非表示/違反報告)
ぽん、(プロフ) - ちさ子さん» あわわわコメントありがとうございます！！ありがたいお言葉で頑張れます！ (2019年12月18日 16時) (レス) id: 97d132fcbf (このIDを非表示/違反報告)
ちさ子(プロフ) - すごか面白くて、一気に読みました！！続き楽しみすぎて眠れないです笑笑 (2019年12月18日 3時) (レス) id: 62cdfd78f2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽん、 | 作成日時：2019年6月1日 0時
