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【これこそ恋煩いである】
熟れた林檎のように火照った頬を壊れ物のように優しく触れながら、再度口付けを落とす。香水とは違う彼女の香りが匂う。
『風邪、ひいちゃうよ……』
「貴様が悪いことを自覚しろ、阿呆が」
乱れた衣服、涙をうっすらと浮かべる瞳。そして何時もとは違い、漂う色気。Aが然程、気にしていようがなかろうが。
理性が今にも、消えてしまいそうな状態で甘えられれば我慢するのも限界がくる。幾ら、付き合っているとはいえ、危機感がない。
喰われてしまうことを理解していない愚者は、飢えた狼に体を捧げることしかできない。それは何処にもある秩序であり理だ。
「そうだな……。もしも僕が風邪をひいたら、看病はAの役割だ」
『今は、いや……』
「では、何故弱っているというのに、男を部屋に上げた……?」
『だって、龍くんだったから……』
「他訳。そんなものは理由とは呼ばん」
『樋口ちゃん、呼ぶよ……!!』
「好きにしろ。だが、樋口が駆け付けた時にはもう遅い。後悔しても良いなら呼べ」
『うぅ。病人に無理をさせるなんて……』
「汗をかけば、治りも早くなる。黙って喰われるんだな、A」
覆い被されば、仕方ないとでもいうかのように首に腕を回される。それに応えるように頭を押さえつけながら、深く深く口付けた。
(ほら、風邪ひいた)
(ふん、貴様が悪い)
(私は悪くないのに……)
(あれほど、気持ち良さそうに鳴いていたではないか)
(……もう、知らない!!)
【常磐薺】人をひきつける、甘い誘惑
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作者名:セニオリス | 作成日時:2019年8月13日 14時