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……


日を追うごとに自分が疲弊していくのがわかる。空気を抜かれていく風船みたいな気分だった。

あれから鶴丸国永が私の前に姿を現すことは全くなくなったが、その代わりに器が時折軋んだように痛むから辛い。


今日もまたずきずきと悲鳴を上げている身体を引き摺って、校内を移動している。


「Aさん」
「はい、なんですか。……先生」
「そんな怯えた顔をしなくてもいいじゃないか。きみときみの器のことで話があるんだけど、いいかな」


廊下を歩いていると当然のように養護教諭に見つかった。私はこの男が苦手だ。三年前からずっと。

この男__建前があるので一応先生と呼ぶが__はどうやら審神者や刀剣男士、被験者に関する知識を持った研究者らしい。政府から配布された資料には専門家として顔写真と名前が載っていた。胡散臭い笑みを浮かべていたためにてっきりペテン師か何かだと思っていたが、一応この道のエキスパートのようであった。


「それで、話とは」
「鶴丸国永が発見された」
「はぁ、それが何か?」
「まだわからないのかい? 奴は君の器の近侍だ」
「…………そうなんですね」
「おいおい、随分面白くない反応をするじゃないか」
「面白い面白くないは今の話題に必要ですか? これ以上無駄なことに時間を割く暇はないんですが」
「いや、有意義な時間になると思うよ。きみが思っている以上にね」
「どういう意味ですか」


全く話が見えないと思った。そして、話の見えない先生の口調にも苛立ちが募っていく。
中学三年ももう時期終わる、春の気配のしない二月。私がこの校舎を出ると決めてから一年が過ぎていた。


……

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作者名:木浪 | 作成日時:2020年4月21日 15時

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