擬似恋愛【鶴丸国永】 (ページ16)

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……

モルモットのための飼育小屋＿＿そんな不名誉な名前で呼ばれるのが私の通う中学校であった。

審神者や刀剣男士の器を持つ、なんていうのは世間的に見ればあまり良くないことだとよく言われて育ってきた。その意味を今はよく理解している。

カースト制度よりずっと緩い、それでいて100人が見れば90人がそれとわかるような差が審神者や刀剣男士と現世に生きる人間の中にはあった。それを明確にすることで上手く世の中の調和が取れていると言うべきなのか、少数のヒトにそれを押し付けていると言うべきなのか。

「審神者よりも刀剣男士の方が世間から見てわかりやすい特徴をしているだろう？派手な髪、日本人らしからぬ瞳。まぁ他にも色々あるだろうが＿＿とりあえずはそのふたつ」
「刀剣男士は見てわかる脅威として封じ込められている、と？」
「いや、そんなもんじゃないよ。彼らは我々が思っているよりずっと力を持っている。それこそ、魂と会話し、主人格を器へと移せるくらいの力をね」
「それって＿＿」
「ああ、彼……鶴丸国永のことを指している。でももしかしたらここではない別のどこかではまた別の刀剣男士が魂を乗っ取って生きているのかもしれない」
「…………ますます私を呼んだ理由がわかりません」
「そうだろうね、きみはただの中学生だし。当たり前だ」

何が言いたいのだろうか、この男は。私を苛つかせるだけ苛つかせて楽しんでいるのか？

「まあズバッと言っちゃえば“魂さえ抑え込んだ刀剣男士を制御できるのは主である審神者だけ”って話なんだけどね」
「…………はあ」
「そんな間抜けな顔してないでちゃんと聞いてくれよ？一応これも卒業資格のためなんだから」
「卒業資格ですか」

中学校を卒業したとしても大抵私のようなハンデを負った人間は同じ系列の高校、大学にしか進めない決まりになっている。そうなると、自ずと道は狭められ、結果職場も刀剣男士や審神者の研究・解明といった“嫌われ者”の仕事をすることになるのだ。私はそれが嫌でここから出ようとしている。もしここが刑務所であったなら、私は脱獄犯というわけだ。

「ま、そんなに固くなることはない。ただ彼の思惑を暴いて大人しくさせればいいだけ。飼い犬の手網(リード)は飼い主が握ってなきゃいけないからね」
「それだと私が一生彼につきまとわれることになるんですが」
「ああ、それはないから安心していいよ」

きみの心が変わらない限りね、と先生は薄い笑みを浮かべた。