客観的幸福論 (ページ31)

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　北斗くんは家の前に出て待ってくれていた。

「A、ちょっと松村くんに話したいことあるから待ってて。」
「わかった。」

　車から降りずに待つことにした。窓ガラス越しにぼんやりと声が聞こえる。良くないと思いつつ、そっと窓を開けた。

「松村くん、BBQ楽しかった？」
「えぇ、はい、すごく。」
「それは良かった。
　……あのね、あの子のためだけに生きようなんて考えないでね。あの子のためじゃなく、松村くんのために一緒にいたいと思えるなら一緒にいればいいし、そうじゃないなら一緒にいなくて、いいのよ。おせっかいかもしれないけど……」
「はい、わかってます。今回、海に行って、陳腐かもしれないですがちょっと変わったところがあったんです。だから、もう大丈夫です。」
「詳しいことは聞かないけど、ちゃんと生きたいように生きてね。」
「はい。」

　母が、パッとこちらを振り向いた。

「A、降りてらっしゃい。もういいわよ。」
「はーい。」

　ドアを開けて、北斗くんの前にしっかりと立つ。

「ただいま。」
「おかえり。」

　北斗くんは嬉しそうににっこり笑って言った。

　母は、じゃあ元気でねと言い去っていった。本当にあっさりしている人だ。

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