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心配、と言った後、母がひっそりと笑った。少しだけ眉を下げて。
「心配?」
「もしよ、あなたたちが付き合い続けて、でもあなたは家にいてってなったとするじゃない。それで、またAに何かあったら松村くんが今度こそ壊れちゃうと思ったの。
もちろん、Aを松村くんの手元に置いておいて、それでなんかあったらもっとまずいことになったかもしれないけど……。でも、任せた方がいい気がしたの。賭けみたいなものね。向こうの親御さんとも随分話し合ったわ。で、お互いの家族が同意する形に落ち着いて、あなたのことを松村くんのもとに送り出したの。」
「私、そんなの知らなかった。」
松村くんのご両親にも話をしていたなんて。それは当然なんだけれど、松村くんのご両親とはほとんど顔を合わせたことがないので申し訳なくなった。ご挨拶に行かなくては。
「もう、それだったらご挨拶に行かなきゃ。ご迷惑にならないように、もっと歩けるようになってから。」
「そうね。後で松村くんに聞いてみてからにしなさい。」
「うん。」
話しているうちに荷物をまとめ終わったので、車に乗り込んだ。実家では車椅子を使わないでいられた。本当に体が良くなってると思った。
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作者名:睡蓮 | 作成日時:2023年5月30日 1時