客観的幸福論 (ページ29)

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松村北斗帰宅したよ。Aも早く帰っておいで。
Aうん、今準備してる。待っててね。

　母は、もう帰っちゃうのと言いながらも、私が楽しそうにしているのを見て満足気に笑った。

「松村くんの負担になるだろうと思いながら、あなたのこと任せてたけど楽しそうなら良かった。」

　ずっと疑問に思っていたことを聞く機会だと思って、母に聞いてみることにした。

「そもそもなんで、お母さんたちは私のことを北斗くんに任せようと思ったの？色々理由を言ってくれたけどそれだけじゃないんでしょう。」

　母は、思い出すような遠い顔をして言った。

「すごく必死に頼み込んでくれたのよ、松村くんが。俺に任せてください、1度傷つけた経験があるから信用ならないかもしれませんがお願いしますってすごい切羽詰まった顔で。松村くんが悪いわけじゃないのにね……。運転手が悪いって言っても、あの人もすごく必死にあなたのことを避けようとした痕跡があった。恨みたい気持ちはもちろんあるけど……。恨んでもしょうがないこと、わかってるから。
……そりゃ、私たちも悩んだわ。だってほら、何かあったときに松村くんがサインするわけにいかないし。でもね、松村くんのことがすごく心配になっちゃって。」

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