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夕方になって、北斗くんから動画が送られてきた。青いはずの海が夕日ですっかり橙色に染まっている。どこまでも続いていきそうな海だった。アングルが変わって、北斗くんの足が映し出される。脛や足の甲にも砂が付いていて、とてもはしゃいだことがわかった。そのまま、2、3歩歩くと、砂を踏みしめる音がした。もう一度海が映されて、聞こえるか聞こえないかの声で、「ありがとう。次は一緒に来よう。」と北斗くんが言った。樹くん、バラしたな。ほんの少しの恨めしい気持ちと、胸があたたかくなるような優しい気持ちが入り混じった。
Aたくさんの写真、ありがとう。
松村北斗送ってない写真まだまだあるよ。
Aやだぁ、海なのにスマホばっかり笑
現代っ子ね笑
松村北斗見せたいし、残せるもんなら残しておきたいからいいのよ笑
楽しんだしね。
A来年の夏、頑張って海に行けるようにするから連れて行って。
松村北斗もちろん。楽しみにしてる。
写真からだけじゃなく、トークからも潮の匂いがするような気がした。私が動けるようになってきてからの切羽詰まったような表情や雰囲気。今日の写真たちからはそれを感じなくて安心した。北斗くんが私から離れていく、なんてことはどうでもよかった。心配する必要すらないことがもうわかっていた。
夜になって、北斗くんからはBBQの写真や花火の写真が送られてきた。花火をやる予定はなかったらしいが、ジェシーくんと慎太郎くんが前日のうちに用意していたらしい。いそいそと花火を買い込む2人の姿が想像出来て、可愛らしいと思った。
そして、京本くんからもたくさんの写真が送られてきた。骨付き肉を頬張る顔、花火をする横顔、寝顔……。ずるい、と返信したら、来年は一緒に来ようと返ってきた。
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作者名:睡蓮 | 作成日時:2023年5月30日 1時