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第200話:狙い ページ10

カシャンッ、と勢いよく壁にぶつかったそれに釣られたように目で追い、眞鍋は咄嗟にスタンガンを拾うか敵襲に備えるかの二択に逡巡した。


「テツヤ!もう一発だ!!」


「はい!!!」


その隙を逃さない赤司からの指示が飛ぶ。

間髪入れずに次のボールを黒子が振りかぶるのと、
Aが顎を限界まで開いたのは同時だった。


バゴッッッ!!

ガリィッッ!!


「ーーーーがァあッ!!??」


黒子の二撃目のターゲットが呉原だと直感した、Aの咄嗟の行動だった。
自分の首に巻き付く太い腕が、黒子の不意打ちでほんの少し緩んだのを見逃さず、Aは全力で噛み付いた。

人を噛んだことなど一度もない。だから加減も分からないし、する気もなかった。

恐怖と拘束により動けなかったはずが文字通り牙を剥いたAに、眞鍋もぎょっと狼狽えた表情を見せる。


見えない幻から至近距離で放たれる豪速球。呉原には躱すことはおろか防ぐことだってできなかった。
ましてや自分が拘束している人質から、本気で噛みつかれでもした時には。

顔面にボールが直撃したビリビリと腫れ上がるような痛み。
右腕には食いちぎられたかと思うほど全力で歯を立てられ、呉原は思わず呻き声を上げる。


本気の本気で人間が人間に噛み付けば、例えかよわい女子中学生であろうと激痛を食らわせることができる。
二箇所からの予想外の激痛に錯乱した呉原は、Aを剥がそうと腕を力任せに振り払った。


「っ…………!」


その瞬間Aは全力で噛み付いていた顎をいとも簡単にほどき、細い体は呉原の腕力に逆らわずステージの端へと投げ出される。


「ッ馬鹿兄………!」


気付いた眞鍋が手を伸ばすも、もう遅い。

二転三転、派手に転がった勢いのままに段の角に足を掛けたAは、一切の躊躇いなく身を投げるようにステージから飛び降りた。

頭から落下していくAは迫る床との衝突の衝撃に備え、目を固く瞑り奥歯を噛み締める。


「大輝ッッ!!」


「…かってるッ!」


赤司が名を呼ぶ前に青峰は彼女の落下地点へと走り出していた。


ズザァアアッ


砂埃でジャージが汚れるのも構わず、Aと床との間に身体を滑り込ませる。


「うぐっ……!!」


「ってて……、セーーフ…」


間一髪Aをキャッチした青峰は人ひとりを受け止めた重みと痛みに構わず、そんな風に零した。

Aは床ほどでは無いものの固く引き締まった胸板にぶつかった衝撃で、げほごほと咳き込んだ。

第201話:勝敗→←第199話:千載一遇



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Mae(プロフ) - ?? ??さん» わー!嬉しいコメントありがとうございます!遅くなりましたが続編もぜひお楽しみ頂けたらと思います!^^ (2022年4月19日 19時) (レス) id: d276010101 (このIDを非表示/違反報告)
?? ??(プロフ) - つい一気読みしてしまいました、、くっそ面白かったです続き待ってます!!! (2022年4月9日 21時) (レス) @page47 id: faab22f8d0 (このIDを非表示/違反報告)
Mae(プロフ) - ルカさん» お待たせしてすみません!汗楽しみに待っていて頂けて本当に嬉しいです!!(*ˊ˘ˋ*) (2022年1月20日 3時) (レス) id: d276010101 (このIDを非表示/違反報告)
ルカ(プロフ) - やはりMaeさんは神だ…!更新ありがとうございます! (2022年1月16日 21時) (レス) @page46 id: e645865379 (このIDを非表示/違反報告)
Mae(プロフ) - ルカさん» 神!?笑コメントありがとうございます!書き溜めておりますので暫しお待ちを!かっこいい赤司くん書けるよう頑張ります(^^) (2022年1月8日 16時) (レス) id: d276010101 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Mae | 作成日時:2021年3月17日 2時

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