第195話:逃走 ページ5
体育館で繰り広げられている戦闘の様子を眺めるステージ上の私と眞鍋くんの様子は対象的であった。
顔を青ざめさせ、時折見ていられないというように顔を逸らし、後ろ手に縛られた両手を握り締めてはらはらと落ち着きなく視線を送る私。
一方眞鍋くんはーーーー長い足を投げ出すようにして沈み込むようにソファにもたれかかり、顎を上げた格好で、酷くつまらなそうな顔で目下の情景を見下ろしていた。
キセキ達の善戦、彼等の喧嘩慣れは私にとっても勿論予想外のことであったけれど、眞鍋くんにとってはどうだろう。
もっと、驚くとか焦るとか、歯噛みするとか、もしくは悦に入るとか。そういう反応をするものじゃないのか。
玩具に飽きたというような雰囲気でも無い。この状況での彼の表情は、退屈そう…というよりはあまりにも冷たく、無表情だった。
「あーー……こっちはもう終わりかぁ。つまんな。」
不意に彼がぼそりと零した言葉にびくりと肩が跳ねた。横目で様子を窺っていたことがばれたかもしれないと思ったからだ。
しかし続けて彼の口から発される文字列からして、私の視線を咎める意図のあるものではなかったらしいとわかる。
「役に立たねぇなぁコイツら。やられすぎだろ。」
「怪我させんのは……こんだけ差ありゃ無理か。」
「今更人質として使う?……のも意味無さそー。」
「どーすっかなー……あー……うざ……」
……?
独り言、だよね。
にしてははっきりとした発音で届く言葉の意味がよく分からない。
「よっし。」
ぶつぶつと零すのをぴたりと止め、投げ出した両足を引き寄せてぱんと手を打つと、眞鍋くんがソファの上に立ち上がった。
「…!?」
「Aちゃん。オレと逃げよ。」
にこ、と貼り付けたような笑顔を浮かべた彼の手が脇腹に差し込まれ、身体がふわりと宙に浮く。
「きゃあ!?」
ぐっと抱え上げられたと思えば片肩に担がれ、がくんと頭が下がって視界が彼の背中一色になる。
私を担いだまま彼がソファから飛び降りたので、重力に従い身体が大きく揺れる。
お腹に肩の骨が刺さるのが苦しい。
「やだっ!!は、離してっ…降ろして!!」
片腕で持ち上げられているだけなのに、腕も足も縛られているから思うように抵抗できない。
なりふり構わずじたばたともがいて暴れる私。
彼の考えは分からないが大人しく連れていかれるのは絶対にまずい。
暴れながら張れる限りの声で叫ぶ。
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Mae(プロフ) - ?? ??さん» わー!嬉しいコメントありがとうございます!遅くなりましたが続編もぜひお楽しみ頂けたらと思います!^^ (2022年4月19日 19時) (レス) id: d276010101 (このIDを非表示/違反報告)
?? ??(プロフ) - つい一気読みしてしまいました、、くっそ面白かったです続き待ってます!!! (2022年4月9日 21時) (レス) @page47 id: faab22f8d0 (このIDを非表示/違反報告)
Mae(プロフ) - ルカさん» お待たせしてすみません!汗楽しみに待っていて頂けて本当に嬉しいです!!(*ˊ˘ˋ*) (2022年1月20日 3時) (レス) id: d276010101 (このIDを非表示/違反報告)
ルカ(プロフ) - やはりMaeさんは神だ…!更新ありがとうございます! (2022年1月16日 21時) (レス) @page46 id: e645865379 (このIDを非表示/違反報告)
Mae(プロフ) - ルカさん» 神!?笑コメントありがとうございます!書き溜めておりますので暫しお待ちを!かっこいい赤司くん書けるよう頑張ります(^^) (2022年1月8日 16時) (レス) id: d276010101 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mae | 作成日時:2021年3月17日 2時