４. 選択肢 ページ5
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私より一回り大きくて優しい手が私の腕を引き、入学を祝うように桜が満開に咲いた中庭で徹は足を止めた。……今の私には、その桜の花が少しだけ眩しくて、思わず、目を細める。
「えっと……何で及川がここにいるの？」
視界の端に映った徹の横顔に、ふと問いかけた。口をついて出たのが「及川」と言う名前だったのは、徹との間に壁を作ることを私が望んだからだろうか。
「Aこそ、高校離れるからって俺のことフったよね？」
そんなの決まってる、徹は白鳥沢に行くはずだったから。でも、きっと……徹と別れるための口実でしかなかったのだけど。
「白鳥沢から推薦きてたでしょ？」
「俺は白鳥沢行くなんて言ってないよ。」
確かにその通りだけど、彼女にくらい教えて欲しかったよ。そんなことを考えたからか、自分の表情が硬くなったのが分かって、一呼吸置いてから話を進めた。
「でも、及川が白鳥沢行かないとも言われてないじゃん。」
的確に言葉を発したけれど徹はピンときていないのか首を少し傾けて考え込むそぶりを見せて言葉を発した。
「え、あれ…？言ったつもりだったんだけど……」
「聞いてないよ。」
「うわ、ごめん！１番に言おうって意識しすぎて忘れてた!!」
「……そっか。」
徹らしいって思ってしまうんだ、好きでいるのやめようって決めたはずなのに情けないよね。
「えっと……じゃあ、俺がAと別れる理由ないよね？俺ともう一回付き合ってよ！」
沈黙を破るように発された言葉を素直に喜べないのは中学の時と同じ事を繰り返したくないって心から思うから。君を忘れたいのに、忘れなきゃ徹の為にもならないのに、今も好きで好きで仕方ないからこの選択をするんだ。
「ごめん、及川とは付き合えない……。」
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作者名：羽瑠 | 作成日時：2021年10月10日 14時
