レフ・トルストイ ページ35
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「Aちゃん」
「……お疲れ様です」
任務前より静かなのは仕方ない。
いつものことだし。
今は後処理と死亡確認の時間だ。
普段なら帰っていいことになっているが、今回は計画外の事態が起こったので念のため現場に残っていた。
あーもうこれは絶対報告書長くなるじゃん……。
今23時だから今夜は泊まりかな……。
母親に連絡を入れようとしたとき、通信が入った。
「安部部隊長、不審者を発見。羽の模様の刺青を確認」
「……了解」
場所を聞いてから、通信を切る。
歩き出しながら石川さんが呟いた。
「あの状況で生き残った？」
「異能持ちで確定だネ」
その男がいたのは防波堤の上。
逃げも隠れもせず、ただ突っ立っていたという。
そんな話ある？
銃撃戦目の前にしてしかも仲間バタバタ死んでたら逃げない？普通。
その場所につくと、金髪の青年が拘束されていた。
身なりはそれほど良くなくて、白い肌が薄汚れている。
20代前半に見えた。
私たちが近づいても一切動じることなく、静かに呼吸を続けている。
何語を話せばいいかわからず、とりあえず学校で習う拙い英語で問う。
「
「
「え……
返答があるとは思ってもみなかったので、狼狽えて学校と同じ質問の仕方をしてしまった。
レマルクさんは場に似合わず爆笑しながら言う。
「
背中をバシバシ叩かれながら、慌てて口を開いたが、遮られた。
「
これには流石にレマルクさんも黙り込み、彼の方を向いた。
相変わらず表情は読めない。
すると、その顔をじっと睨んで(見つめて？)いた川端さんが、口を開いた。
「お前、日本語話せるだろう」
「……えー」
思わず声を漏らしてしまった。
彼が小さく肯定を示したからだ。
最初から言えよ。
ジャパニーズイングリッシュなの気づいてたろ。
私が心の中で文句を垂らしていると、レマルクさんがかなり深く突っ込んだ。
「なんで気分最高なノ？」
そう問われると、彼はまた小さく、こう答えた。
「もう、俺は死ぬだろう？」
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作者名：のーと。 | 作成日時：2018年10月1日 22時
